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「久夜、1時間目なんだったっけ?」
「んー、生物ちゃう??」
「物理な。物理。」
「ありがと、都賀君。」
制服に着替えながら、1時間目を聞けば、覚えてない俺や久夜とは違ってちゃんと時間割を覚えてる都賀君。
真面目な都賀君に感謝して、物理の教科書をロッカーから取り出す。
「部活の時も思ったんだけどさ、呼び捨てで良いよ、同い年なんだし。」
「都賀……」
「多分他のやつらも呼び捨てで良いんじゃないかな、俺たちも勝手に廣川って呼んでるし。」
「あ、あぁ。呼び捨て……」
ハードルが…高い。せっかくだし、呼び捨てで頑張ってみるけど。
ちょっと都賀と仲良くなって、教室に戻る。
……リレーも悪くないかもしれない。
「梁瀬も、もっと色んなやつと喋ったらええのに。したら、友達も増えるで??」
「…それができたら苦労してない。」
「せやったなぁ。せやけどな、梁瀬。俺らが来年も同じクラスになれるとは限らんのやで?」
「…………」
クラス替え……まだ当分先のことだけど、いつかはやってくる未来。
俺はずっと久夜といれば良いと思ってたけど、久夜は久夜なりに友達欲しいだろうし…いや、多分誰とでもすぐ仲良くなれるだろうから特別なことはないけど……でも久夜だって自分の時間ぐらい欲しいよな……
友達、か……どうやったら出来るのか、教えてほしいよ、こっちが。
「まぁ、今年は少なくとも俺が一緒やし、その間にいっぱい友達増やせばいいんちゃう??
せっかく部活仲間も多いんやから。」
「そうだけど……」
部活仲間と言っても、部員と話す機会なんて多くないんだよなぁ……もう少し俺が色々出来るようになったら違うんだろうけど。
難しい。…すっげー難しい。
「そない顔しなや、今を楽しまんと損するで。」
「久夜は楽しそうだもんな。」
「梁瀬は楽しくないん?」
「今は楽しいよ。」
でも、純粋になんて楽しめない。
昔みたいに、何も知らなかった俺じゃないから。
純粋にあいつに手を差しのべた俺は、もういないから。
純粋、だった結果がこの結末なら、俺は今すら楽しめてないのかもしれない。
久夜といる時間は楽しいと思うけれど、消えないあいつが、今を楽しめてない証拠…だろうか。
「氷野のことでも考えとる?」
「……」
「ビンゴ、やな。梁瀬の中はやっぱりまだ氷野が一番なんやなぁ………」
「……そんな顔すんなよ。……俺は、彼方のことが多分今でも好きなんだと思う。
けど…、久夜のことも同じくらい大切だから……」
彼方のことを思うと、怖くてしかたない。
けど、同じくらい綺麗だった頃のことを思い出す。
あの日、初めて彼方と走った日。
一緒に練習をした日々、学校で過ごした時間、最後の大会。
全部、大切だった。
久夜と一緒にいるときの安心感とは全く違う。
「お前は時々ちょー素直やんなぁ、そうゆう可愛いこと言わんといてや。」
「っ!!」
「赤くなるんは初めてやな。」
「バカっ!!」
ポフポフと頭を撫でられる。
こいつは何がしたいんだっ…!
熱くなっていく顔を隠して机に伏せる。
あー、もう、言うんじゃなかった…っ!!
後悔してももう遅いけど……
上からは久夜の笑い声がするけど、顔は上げない。
だから俺は、この時周りにいたクラスメイトが今にも砂糖を吐きそうな生暖かい目でこっちを見てたことになんて気づくはずもなかった………。
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