アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4
-
身長が然程変わってないように見える。
だからこそ、年齢を重ねた目の前の龍に既に愛しさが溢れる。
湧き水のように本能的に"独占欲"が湧く。
自分自身、魅力的な龍に自制できるか今更ながらに不安に駆られた。
「あの……佐々木さん」
「はい?」
脳内にいる理性や本能たちと会話をしていた佐々木は、さっきから黙りこくって龍に気まずい思いをさせていたらしい。
しかし、久しぶりに交わす会話が、俊文の子供かと思うほど、謙遜をわきまえた口調だった。
見るからに純朴な感じがする。
「貴方はうちの会社を潰しに来たんですか?」
そのイメージは一瞬にて消し去ることになった。
微笑みながら「会社を潰す」という言葉を発する龍。
ここまで闇に染まっていたことだけは、佐々木の今回のミスだった。
安直に捉えすぎたのだ。
もっと、もっと、調べていた段階で気付いていれば、次に返す言葉も用意してここまで来られたはず。
佐々木は一瞬動揺の色を見せてから、慌てて返答した。
「ええ、そうですね。容赦しませんよ」
これが正解の返し方かは分からない。
けれど、龍がどこまで「米田酒造」について知っているのかさえ、分からない。
だから、この答えが今現在、尤もだと考えた。
(罪悪感がぱねぇな。けど、俺が鬼になってでも、ここを潰す。龍に嫌われても、潰してやる。一年で)
「そっか。ありがとう」
「……」
「ん?!佐々木さん?!どうしたんですか、僕を抱き締めて」
龍が言う「ありがとう」は重みが違う。
この子は自分の家をほぼ全て、理解している。
佐々木はその言葉で悟った。
そう思ったら、自然に目の前のベッドに座っている龍を抱き締めていた。
身長が低ければ座高も低く、佐々木は床に膝をたて大きく龍を包み込んだ。
佐々木の体が余ってしまう華奢な龍を、力強く、優しく抱き締める。
同情は、人を傷つけることもあるのだと、経験しているのにも関わらず、どうしてもその痛みを分けてほしい。
佐々木はせめて龍だけには、と口を開いた。
「すみません、いきなり抱き締めて。自己紹介がまだでしたね。私、佐々木真と申します。勿論、会社については下調べをしてからここへ来ているのです。計略的にこうして龍くんの執事として身の回りを世話していくのですが、これは貴方の読み通り、ここを粉砕するためです」
あとから佐々木は必ずここの呪縛から解放すると約束をした。
龍はいつか見せた純粋な言葉を貰う。
「だったら……二人の時くらいタメで。これから頼んだよ、兄ちゃん」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 13