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「……さっさと出ていけ。お前もアイツと同じ姑息なやつだからな、目が離せん」
父が「アイツ」呼ばわりする人こそ、龍の依頼人でもある母親だった。
本を手に取ったまま、龍は部屋をあとにする。
姑息なやつ、と龍までひとくくりにされたことに、言及はせず。
例のものは見付からなかった。
しかし、状況は悪化の一途を辿っているのは明白だ。
父の乱れようは、そうとう裏金が回っている、または切迫した何かがある。
家族で一番地に足のついた龍の考えは、当に的を得た憶測であり、事実だった。
それが分かっただけ今日の実りだと言わんばかりに、手に取った本に目もくれず、自室へ戻ると脱力してベッドへダイブ。
しかし、目障りな本のせいで、妙に落ち着けず、父の部屋から持ってきた汚物はゴミ箱へ磔にされた人間に投石するように、忌々しげに投げられた。
「こんなもの、僕が大人になる頃には無駄な知識になるだけだ」
間もなくして、父に連れられやってきた、後に家を潰すと龍に公言した佐々木真。
彼に「嗅ぎ回る真似をしなくていい」こう言われたとき。
自然と心が軽くなったことを、龍は確かに感じ取った。
そして、この言葉に、どれだけ救われたか。
バカ優しい兄ちゃんは、それ以上の関係を望んでいるとさえ言う。
常に淀んだ視界が、はっきりと克明に、佐々木真だけを鮮明に映し出した。
が。
過保護すぎる面を知らなかった龍は、頭を悩ませながらその日、帰宅する。
いや、初めてあったときから、過保護だったのだと、思い出した。
膝の中央部で盛り上がっている傷痕が、そう言っていた。
なるべく早い処置をと自宅まで横抱きにされ、痛みを和らげるようにと膝の上に乗せられ、胸を貸してもらった。
それだけでも、なぜか、他人からの愛情を感じた気がして、こそばゆい思いをしたものだ。
今となっては、他人ではなくなりつつあるけれど。
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