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50如月
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若虎が朝食を運びに水場を出て、その場には俺と如月さんが残った。
俺も手伝わなきゃ……
「かーえで♪」
「は、はい?」
如月さんはニコニコしながら俺を手招きした。
如月さんが座る縁側に近寄ると、如月さんは俺の着物の裾を捕まえた。
「ちょっと顔を見せておくれ。」
そういいながら、如月さんは俺の輪郭に手を添えた。
わ、わ……
いきなり近づく顔に少し焦りながらも、俺は動けずにいる
。
若葉のような色の瞳が俺の顔をしっかりと見つめる。
綺麗……。
キリリとした眉毛。少しつり上がった二重の目はその若葉色を大きく見せる。整った唇に、時々八重歯が見えて魅力的になる。
「アンタ、本当に可愛い顔をしているね。女形ができる顔だねェ」
「っ、嬉しくないです…」
突然開かれた口に、意識を持っていかれていた俺は過敏に反応してしまう。
び、びっくりした……。
「嬉しくないって、アタシや卯月の立場を考えなさいよ」
手を離し、クックと笑う如月さんはやはり、お職を張るだけあってとても美しい表情になる。
「ご、ごめんなさい…?」
「いやいや、そんなに素直に謝らないで。困らせたいわけじゃないから」
如月さんは微笑を浮かべ、また俺の顔を見つめてくる。
「楓はどうして朱蘭屋に来たの?憧れ?」
俺はとりあえず、不審感を持たれないようにと作った、
『東北の田舎から出てきたけど、頼りがないためどうしようかと迷っていたところ、卯月さんに助けられ、朱蘭屋で働くことを勧められた』
という設定を説明した。
「へぇ、東北の生まれなのかィ。よくここまで来たね」
如月さんは『興味ありげ』というように頷いた。
「楓は東北生まれ。……ふむ、じゃあ他にも質問させて」
「質問?」
「アタシは楓のこと何も知らないから、色々質問したいの。誕生日はわかる?」
成程……。
どうやら如月さんは俺のことを知っておきたいらしい。
最初は綺麗すぎる見た目からキツイ人かとばかり思っていたけど、案外好奇心旺盛?なのかも。
「俺の誕生日は8月20日です。」
「ふぅん、葉月なのか。おや、来月じゃないかィ」
俺の誕生日を聞いた如月さんは嬉しそうに眉をあげた。
来月……もう来月なのか。
この時代に来て日は浅いし、だいたいの現世の月と日付は覚えている。
けれど、1つ不安だったのは現世と江戸時代では、暦違いがあるのではないか、ということだった。
一ヶ月丸々違うということはないだろうけれど、知っていて損は無いだろう。
「じゃあ好きな食べ物とかある?」
「甘いものならなんでも……。あ、俺、饅頭大好きです!!」
男子で甘い物好きってなかなかいないって言われるけど、甘い物は正義だよ。
饅頭なんて、神の食べ物さ!!
あの餡子にふわふわシットリ、若しくはカリカリとした外観でシットリした白餡と合わせた……あぁ、涎が出そうだ。
「幸せそうな顔をしているねェ。本当に饅頭が好きなのか。覚えておこう。」
おっと、そんなに表情に出てかな……
「じゃあ、好きな動物は?」
「……犬かな」
特に柴犬とか可愛いよね。あのもふもふして、クルンってなってる尻尾とか。勿論飼ったことないけど。
「特技とかある?」
「特技……あ、俺歴上の偉人全員言えます!!」
ふふふっ!!この日本史大好き人間吉野楓とは俺のこと!!!!!
じゃなくて、本当に日本史は大好き。
「記憶力がいいんだねェ。」
「俺、土方歳三が特に好きで!」
「土方歳三?」
その名前を聞いた如月さんは、途端に目つきを鋭くさせた。
な、なんだろう……?
「土方歳三ねぇ……。ふぅん……」
如月さんは懐から、さっきしまった煙管を取り出し、火をつけないまま加えた。
少し機嫌が悪くなったように見える。
なんで……
もしかして、土方歳三が嫌い!?
ん?だけど、この朱蘭屋は幕府お抱えの特遊郭なんだよね??
ぐるぐると様々な疑問が浮かび上がる。
わかるのは、俺が不味い単語を言ったということだけだ。
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