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育てた
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「え、ちょっと、灰吏さ……ここ、外でっ」
「大丈夫です。こんな時間、誰も来ませんよ」
さっきまで私の座っていたブランコを取り囲むように付けられた鉄棒。そこには今、春陽が座っている。
背中から包むように抱き寄せた躯。
この数年、ずっとずっと私の手で育ててきたその躯に、ようやく手を伸ばす。
薄い筋肉の上に適度にのった柔らかい肉。
出会った頃はもう少し細かっただろうか。
思い返せば三食のバランスがお世辞にもいいとは言えないような食生活だったように思う。
秋人さんもそのあたりは適当でしたし。
私の作る毎日の食事で付いてしまったであろうそれらは、春陽の身体に刻まれた私の跡。
白い首筋も、うっすらと骨の浮かぶ肩も、そこに浮かぶ、普段よりも速いのかもしれない血管も、全部私が作っているようで。
「ん……いいですか、食べても?」
「だめです!ここ、外ですから!!」
ちゅ
静止も聞かず、思わずそこに口を付ける。
確認をとった必要はないじゃないか、なんて無粋な言葉を投げかける人物はここにはいないのだから。
柔らかい肉を唇で吸い、食み、そしてまた吸う。
手もおざなりにしてはいけない。
無防備にも1枚の薄手のニットだけを地肌の上に纏った春陽の、その裾から差し込んだ。
その瞬間、きっと冷たかったのだろう、ピクリと震える肩。
慣らすように、彼の熱を移すように、少しの間は唇の刺激だけを与える。
徐々に熱くなる身体と、それに伴って温もりを得ていく私の手。
キメ細やかな肌の感触を楽しむように動かし始めたのも、ちょうどその頃。
引き止めるように添えられた私よりも少しだけ小さな、しかし男らしく骨ばった手は、ただ抵抗の意味を知らないかのように振る舞う。
「だからだめっ……ひゃん!流石に脚は……」
「脚?私は触れてませんが?」
擽ったそうに身をよじる春陽と、全霊を込めて攻めに転じる私。
奇妙な攻防は、突然の乱入者によってあっけなく終焉の幕が引かれる。
「みぅ……みぃぃ」
視線を落とすと、土のような色の、小さな毛玉が転がっている。
「ね……猫?」
くすぐったさの正体に気づいた春陽は、呆然とする。
明らかに親のいない、捨て子のような猫を、しゃがんで拾い上げる。
「貴方はどこから来たのですか?お母さんは?」
「みぃーー……みゃぅうう」
威嚇するように鳴く子猫。
どこか既視感を感じるこの子猫を拾い上げたはいいものの、また放して飢えさせるのも忍びない。
チラリとこちらを振り返った春陽の方を見てみると、何故か満面の笑みを浮かべる。
「家の新しい家族に、なりませんか?」
猫相手に、不思議な勧誘を始めていた。
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