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葛藤-春陽
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僕にはウリエラを守る力がない。
そう思った。
だから無責任に行かなくていいなんて言えない。そんなことをしたら、逆にウリエラを必要以上に傷つけてしまうかもしれない。くだらない憶測だけれど、あの人ならやりかねない。
そんな風に’’もしも’’を考え続ける僕は、ウリエラが一瞬だけ見せた悲しげな表情に気が付かなかった。いや、気がつけなかった。
「大丈夫。春陽、僕は行くよ。」
「本当に、守ってあげられなくてごめん。」
ウリエラに昼食の誘いを残して、僕はリビングに戻った。
昼間は本当に父さんは寝ているらしい。
まったく姿を見なかったから、ある意味皆安心している。
のんびりと時間が流れる、平和な午後。
朝が早かったから、ふわふわとリビングのソファで微睡む。久しぶりに見た夢は、懐かしい、記憶。灰吏がまだ家に来た頃で、父さんはまだ家にいた。
毎晩のように父さんの部屋から聞こえてくる音、声。
そこで何が行われていて、それがどのような意味を持っているのか。実際に見たわけではないけれど、想像できないほど僕は子供ではなかった。きっと僕がそこにいることを、父さんは気づいていた。でも、放置されていた。
それは何故か。
当時はそこまで分からなかったが、今は分かる。
それはきっと教育。僕の中の本能に語りかける類の。
そのために灰吏が使われていたということに、憤りを覚える。
今夜灰吏を呼んだのも、きっと血を吸うため。でも、冬夜が目覚めた今、教育という名目はなく。ただ快楽を得るためだけの行為。それによって灰吏が傷つくことなんて微塵も考えてない、独り善がりなもの。
朝から上の空な灰吏を見てると、やっぱり行って欲しくない。灰吏のことを思って。という理由もあるが、僕の本心は、そんなに綺麗なものじゃない。
嫌なのだ。父さんに灰吏を取られるのが。灰吏の瞳が、僕以外を、それも父さんを写すのが。
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