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夕刻
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陽が陰り、月が現れる。
吸い上げられるように俺の意識は浮上する。ふわふわと柔らかそうな茶色い髪は、夜の色に。髪と同じく色素の薄い瞳は、僅かに血の混じった闇に変わった。
リビングにはちょうど皆が…秋人を除く全員が揃っていた。
「なぁ、ウリエラ、今日…」
「うん…。僕は行くよ。兄さんと一緒に。」
驚いた。
ウリエラが行くと言ったことではなく、灰吏が止めなかったことに。
なんとなくまだお互いにギスギスしている。でも、ウリエラを見る灰吏の目は可愛い弟を見守る兄のそれで。
といっても、そもそもこの家に来た頃はもっと酷かったらしいが。
まぁ最近は…ってそんなことはどうだっていい。
ちらりと灰吏の方を見ると、気まずそうにフイと視線を背けられる。
「ホントに、いいのな。俺は春陽みたいに引き止めるなんてできない。どうなってもしらねぇぞ。」
「それってどういう…」
ガチャ
突然の開閉音にその場にいる全員が固まる。
「おはよう、いや、こんばんはだったかな。ふふ、皆いるみたいだね。お腹空いたなぁ。夕飯にしようか、冬夜。」
「…俺は遠慮する。」
「あっはは。変な意味で取らないでよ。一緒にご飯を食べようって言ったんだよ。」
秋人の言葉には、楽しげだけど、人を従わせる力がある。なにを考えているのかわからないから、従わざるを得ないというべきか。
とにかく、恐怖の夜が始まった。
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