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絶望の淵
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あまりの痛みに声を発することもできなかった。
唐突に突き立てられる刃が、焼けるように熱い。
この時、冬夜は、いつも僕を想ってくれているんだと感じた。
ぐずぐずに溶かされる快楽は、きっと冬夜の想いの分で。
首筋を這う冬夜の舌も、唾液でぬらぬらと光る官能的な唇も、彼の優しさで溢れていた。
そんなことを考えていると、気を逸らすなと言わんばかりにグリッと牙を動かされる。それにもなんの快楽もなくて、痛みで生理的な涙が流れる。
「痛い?痛いよね、ウリエラくん。冬夜はどうだった?もっと優しかったのかな。ふふ。いいね、その顔。すごく、そそる」
’’痛い。冬夜!助けて、やだ、怖い、冬夜!冬夜!!’’
そこに兄もいるのに、何故だか僕の心の中では冬夜の存在が大きくなっていった。冬夜なら、彼ならきっと助けに来てくれる。根拠の無い自信が、僕の口から溢れ出す。
「や…だっ!やだ!助けて、冬夜ぁ」
誰かが来る気配は全くなかった。僕の中で大きくなっていた自信が、ことごとく崩れ去り、大きな絶望へと変わった。
「残念だったね、冬夜は来ないみたいだ。君なんてどうでもいいんだろうねぇ。」
秋人の言葉も相俟って、冬夜への信頼が、ヴァンパイア全体への恨みに変わっていく。
「ほら、お兄ちゃん。こっちおいでよ。夜はまだまだ長いんだからさ。」
悔しさと諦めのような表情を浮かべた兄が、僕達にゆっくりと近づいてきた。
バン
扉を開けた人物は、言わずもがな、彼。
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