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舌打ち
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「あのっ…僕……灰吏さんがす…………」
春陽が言いかけた言葉。それに察しがつかないほど、私は鈍感ではなかった。いや、少し前、天界にいる時はもしかしたらそうだったかもしれない。
でも今は違う。
それはこの世界に溶け込んだということでも、それほど天使とは遠いものになったということでもある。
私はその言葉に答える内容もあの夜にもう決めていた。だから最後まで聞いて、返事をするつもりだったのに。
「二人ともっ天使ちゃんは無事よ!!…って何よ、二人してコッチを見て!なに!?そんなに見つめても何も出ないわよ!!!」
はた迷惑な医師があんなタイミングで出て来なければ。
心の中で小さく舌打ちをする。
私の心の内など知る由もない枝流は、いつもより少し硬い口調で話し始める。
「天使ちゃん、えーっと、名前はなんだったかしら。」
「ウリエラ。……どうだったの、大丈夫…だよね?」
早く結果を教えてほしいと言わんばかりに立ち上がる春陽。私もゴクリと唾を飲んだ。
「そう、ウリエラちゃん。あれは風邪よ。寝てたら治るわ。」
「そっか、よかったー。」
張り詰めていた緊張が解けた様子で、ソファに沈んだ。でもその次の言葉が、その束の間の安心を奪っていく。
「でもね、あの子は今、とっても危険な状態なの。アタシは純粋な悪魔だから、実際のところは分からないけれど、天使って神様の加護がないと、生きれないの。そうでしょう?天原くん。」
「神様の加護…というのは若干語弊がありますが、大体はそんな感じですね。魔界ほどではないですがここも瘴気は濃い。天使には辛い場所には変わりありません。」
そう、考えてみれば私が初めてこの家に来た時も、薄ら寒いものを感じた。自分の場合はすぐに儀式が行われたから気づかなかったが、この空気に何日も晒されるのは、キツいだろう。
「という訳で早めの儀式をオススメするわ。でもアレは準備に時間がかかる。だから応急処置の方法を後で冬夜くんに教えておくわね。」
「え?なんで冬夜なの?」
「応急処置って言うのは、強い魔族の体液を流し入れることだからよ。まぁ吸収されればいいから、’’どこから’’入っても構わないんだけどね、んふ。」
言葉がいちいちおっさんっぽい、なんて言うとこの悪魔は普段のオネエ口調も忘れてキレ始めるから口には出さない。
「さて、アタシは必要な物を取りに一旦病院に戻るから。すぐに戻ってくるけど、ウリエラちゃんをよろしくね。」
そう言い残してバタバタと騒がしく出ていった。
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