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兄弟 2
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コンコン
ノックされたドアに返事をする。
「入りますよ。」
入ってきたのは兄さんで、その手にはペットボトルに入った水が握られていた。
「水を持ってきました。飲めますか?」
そう言いながら僕を起こしてくれた兄さんの腕にもたれてペットボトルを受け取る。
ゴクゴクと音を鳴らして飲んだ水は、今まで飲んだ水よりも美味しく感じた。
カラカラに干からびた躯の隅々に染み込んでいく感覚が心地いい。
「ねぇ、兄さん。」
「ん?なんですか?」
「昔も僕が熱出した時、こうやって看病してくれたよね。懐かしいなー」
兄さんは学校とか仕事とか、色々忙しかったはずなのに、僕が熱を出した時、すぐに帰ってきてくれた。
あの時はなんで一日中一緒にいてくれないんだろうって思ったりもした。でも、今になってわかるのは、兄さんがすごいってこと。
僕も同じ道を辿ってきて、兄さんのすごさを知った。学校も仕事も、一言で言うなら激務。僕はすべてをこなすのにいっぱいいっぱいで、いつもヘロヘロになって家にたどり着く。
でも兄さんは僕の前ではそんな様子は一切見せなくて、病気の時は早く帰ってきてずっと看病してくれてた。
「お前のことがずっと心配でしたから…。今だから言いますけど、仕事も手につかなくて早く帰れって言われてしまったくらいですからね。」
そんなこと言ってるけど、絶対に違う。僕には分かる。
「ありがと…」
やっぱり面と向かって言うのは恥ずかしくて、バッと布団を被ったまま呟く。
目だけチラッと出してみると、嬉しそうな顔をした兄さんと目が合った。
伝わったんだなと思うと、素直に嬉しい。
あの日から一体どれほど経っただろう。再開してからもずっと何も言い出せなくて、でも今日漸く前に戻ったみたいで。
久しぶりにちゃんと見た兄さんは、やっぱり変わってなかった。
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