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嫉妬
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「いっつ…。あ、血が出てる。」
どこで切ったのか、人差し指の先から血を流している創汰さん。
僕は慌ててティッシュを差し出そうとしたけど、それよりも冬夜が速かった。
「もったいない。」
そう言ってなんのためらいもなく、その血の出る指を口に含む。その行為に、僕の胸はチクリと痛んだ。
そういえば最近、冬夜に血をあげてない。
というか逆に僕が血を貰ってたくらいで、前に吸血されたのはいつだっただろうとさえ思える程、冬夜は渇きを癒していない。
創汰さんの血を吸って、僅かに細まる真紅の瞳。久しぶりの行為に、恍惚とした表情を浮かべる端正な顔。
僕の血を吸ってる時も、あんな顔してるのかな…。
僕の中に湧き上がる熱い感情は、冷たい感情に沈んでいく。
”冬夜は僕じゃなくても良いんじゃないか。”
”僕に好きって、愛してるって言ったのは、都合よく血を吸うための嘘なんじゃないか”
”天使なんかよりも神様の方が 、美味しいのかもしれない。”
”そしたら僕は?”
悪い考えはどんどん募って、僕の気分を落としていく。反比例するかのように熱くなる目頭。
ここで泣いたら不審に思われる。
でも、止まれない。
”創汰さんは神様だから”その事実が僕の心にブレーキをかける。
今はそのブレーキが、もどかしくて仕方ない。
”誰にも冬夜を取られたくない。”
”彼は僕だけの物で、僕も彼だけのもの。”
暴力的なまでの独占欲。嫉妬。
こんな思い、僕は知らない。
こんなの、僕じゃない。
そう思えば思うほどに、心の中で生まれるもう1人の僕がいた。
『神様かどうか知らないけどさ、ほら、突き飛ばして奪っちゃいなよ。身を差し出して、"吸って"ってお願いするんだ。』
悪魔のような囁きは、僕の頭を狂わせる。負けじと応戦する天使の僕。
『ダメだよ。だって彼は…』
「ん?やだなぁ、ただの神様ですよ!」
頭の中で出されなかった回答が耳に入ってきて、僕は慌てて現実に戻る。
「そう、ただの…。ってカミングアウトしちゃっていいんですか!?」
もう混乱して、訳が分からなかった。
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