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鈍感
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ウリエラを買い物に誘った。
来ないかな、なんて思っていたが、返信は早く、そこには行く、とだけ書かれていた。
既に出かける準備の出来ていた私は、
まったく…2人とも性格が真逆だと言っても、厄介な所がそっくり。
2人ともこぞって鈍感。
鈍感のベクトルの向きは違っても、大きさは恐ろしいほど似通っている。
私達兄弟は、揃って大変な道を選んでしまったようですね…。
「兄さん、ごめんなさい、遅くなった!」
視線をあげるとパタパタと走り寄ってくるウリエラ。寝起きなのかそれとも泣いていたのか、目が少し腫れているような気がする。
「いいえ、それじゃあ、行きましょうか。」
あえて触れない。ここでやっぱり買い物なんて行かないなんて言い出されたら、元も子もない。
昔から好奇心旺盛で、外出するとフラフラ危なっかしいウリエラ。なれている天界ならまだしも、多分初めて歩く土地だし、昼間だから人通りも多い。
「今日の目的は食料ですが…それどころじゃなさそうですね。ウリエラ、離れないで下さい。迷いますよ。」
ついつい昔の癖で握ってしまった手。刺激を感じてようやく地に足がついたようなウリエラが、おずおずと聞いてくる。
「兄さん…これは?」
「繋いでないとフラフラして危ないでしょう。ふふっ、そういえば昔もよくこうやって繋いでましたね。」
自分でもこの無意識の行動に内心驚いていた。
ずっと、この子がこちら側に来ることなんてまったく考えていなくて、家族を捨ててきたことに、ある種誇りすら感じていた自分。
しかし内実、身体に染み付いた思い出は、抜けてなかったらしい。
「昔は昔でしょ!もう僕もいい大人なんだから、街くらいひとりで歩ける。」
「いいえ、変わりませんよ。私の中ではずっと貴方は可愛い可愛い弟ですから。」
「っっ_____」
そう。その照れた仕草も、自信家で、素直になれないのも、全部変わらない、愛おしい私の弟。
「ねぇ、兄さん。あそこ覗いていい?」
「あそこって…どの店ですか?」
「そこの角のアクセサリーショップ?」
「へぇ、あんな所に店なんて出来てたんですね。最近出来た所でしょうか。」
毎日買い物に来ているのに、気が付かなかった。
好奇心が、疼く。
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