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酔い
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「っはは、あいつに会って、俺も大分変わったよな」
自嘲的、それでいてどこか幸せそうな笑いを聞く人間はいない。
だってここは俺の部屋で、俺以外の人間は、全員リビングでゲームをしているはずだから。
『冬夜、君こそ鏡みなよ!体ばっかり大きくなって子供みたいだよ』
さっき彼に言われた言葉を思い出す。あの時は俺が?って思った。
けど、こんなんじゃ本当にガキみたいだ。
コンコン
誰かがノックをする音が聞こえる。ドアの前に、ウリエラがいて欲しい。頭の中は、そんな希望で満ちている。
期待感を前に、さっきまで苛立っていたのが嘘のように消えて、ドアへと急ぐ。
「ウリ……なんだ、ひなか」
バッと開けた瞬間に見えた影はウリエラのものに見えて。
「なんだってなんだよ。まぁ入るよ、冬夜」
「ちょ、おい」
「あぁ、この部屋もちゃんと準備しなきゃね。今度買い物に行こうか」
「なに勝手に…」
「ねぇ冬夜、さっきはごめんね」
「何がだよ」
さっきからひなの行動の意図が掴めなくて、困惑する。こんなとこを灰吏は鈍感って言うんだろうと思った。
「さっきさ、冬夜の部屋に行こうとするウリエラを引き留めちゃった」
「は?」
「だってあの時ウリエラを冬夜のとこにやったら、酷く扱った気がしたから」
「っ______」
《酷く扱った気がしたから》
この俺が、ウリエラを酷く扱うはずなんてない。そう思っている筈なのに、その言葉が何故か胸に酷く刺さった。
昼も食べずに気づいたら三時を回っていた。
「ひなぁ、俺今から出るわ」
「うん。灰吏さんには言っとくね。」
「悪ぃ」
ウリエラの想い、とか、やたらうるさいひなが、こんなあっさり俺の外出を認めるなんて、後から考えてみれば最早異常と言ってもいいほどで。
その時の俺は、それほど酷い顔をしてたんだと思う。
その後俺は、ひとしきり街を歩いて、最近行ってなかったあのバーに足を運んで、浴びるように酒を飲んだ。
何人かに声をかけられたような気もするし、そうじゃないかもしれない。
気分が落ちている時に飲む酒は最悪で、回りも早い。次第にふわふわと楽しい気持ちになってきて、気づいたら家のソファで横になっていた。
濃い血の匂いに包まれながら。
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