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希望
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『まぁ、彼が帰るかどうかは分かりませんけどね』
どういうことだ?
『あんなにボロボロになって、帰ろうと思える方がすごいですよね。ウリエラくんの傷は身体だけじゃないんですよ?心なんてもうちょっと遅かったら完全に壊れてたんじゃないかな』
「ウリエラの声を…聞かせて欲しい」
『んー、今はやめといた方がいいと思いますけどね』
「どういう意味だよ」
『そういうことです。あ、そうだ。今度天界にご招待しましょうか。まぁ俺も暇じゃないんで、今日はこのくらいで』
そういって一方的に電話は切られた。話の意味が全然分からない。
まず第一に、俺の記憶が無いのが問題だった。
酒を飲んで記憶を飛ばすなんて、ありえない。
ただ、そういえば昨日は変な夢を見た気がする。
家に帰ると変な男がいて、俺に何かを言ってくる。あぁ”いつものやつか”なんて思いながら…俺は何をした?
夢の最後がイマイチ思い出せない。
まぁいっか。なんて簡単に投げ出すには、どこか心に引っかかる。
でもそんなことに構ってられる余裕はなかった。
1枚の羽を手に取る。そのかわいた血の匂いは、やっぱり彼のもの。
今まで出ていなかった羽が出ているということは、きっと本当に大変なことになっていたんだと思う。
情けない
こんなことになるなら、あの時に無理矢理にでも手を離しておけばよかった。
《彼の一生を背負っていく覚悟がないなら、堕天の儀式なんてやめて、彼を天界に帰しなさい。》
覚悟はしてたつもりだった。一生大事にするはずで、ずっとずっと、この手から離さないつもりだった。
今回俺の手から離れていったのはウリエラの方。だけど、その原因を作ったのは俺で、ちゃんと分かってなかったのも俺だった。
だからせめて、はっきりとさせたい。
たとえあの可愛らしい天使を、二度とこの腕に抱けないとしても。
彼以上に愛おしい相手なんて、いなかったしこれからもいないと思う。
でも彼が俺から離れて幸せだと思うなら、それを甘受するくらいの度量は、せめて持ち合わせていたい。
全てのことに区切りをつけるために、もう一度だけ、声を聞きたかった。
《招待しましょうか》
それがどこまで信じられるかは分からない。でも、それだけしか、俺の希望を叶える手段はなかったんだ。
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