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賭け
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「もし私が、貴方に好意を寄せていると言ったら、受け入れてくれますか?」
今回の天界への旅は、賭けだった。
戦天使の規則は厳しい。裏切りは、決して赦されない。今まではこの、御門の家に隠れていたから向こうも手出しは出来なかった。
でも、天界は戦天使のホーム
仲間を、天界を見捨ててのうのうと下界で生きてきた私を、彼らが黙って見逃すはずがない。
たとえそれが、神の来賓だったとしても。
生きてこの場に帰ってこれないかもしれない。だから、思いを伝えようと思った。
帰る場所があったら、何が何でも生きて帰ってこようと思うから。拒絶されたら、その時はその時。向こうで潔く、罰を受けるつもりだった。
「どう、したんですか?なんで今そんなことを…。まるで……まるで天界でなにか……」
泣きそうな顔をする春陽を見るのは、辛い。できれば貴方の花のような笑顔だけを見ていたい。でも私は、多分笑顔よりも涙の方を、多く作らせてしまうんだろう。
聡い貴方は、こんな時に可哀想だ。冬夜のように鈍感なら、きっともっと楽だったろうに。
「今回の天界への旅は、生きて帰ってこられないかもしれない。こんな事情を説明して、断れない状況を作るなんて卑怯だと自分でも思います。」
「でも、私は貴方を愛してる」
「嫌ならハッキリと拒否してください。同情なんていりません。私は、本当の貴方が欲しい」
俯いた春陽の顔は見えない。どんな表情でいるのか。どんなことを考えているのか、さっぱり分からない。
でも彼が自分のことを好きだということだけを、自惚れではなく、分かっていて告白する私はやっぱり卑怯で。
次に来るであろう返答を勝手に予測して期待している私はとても滑稽だった。
フッと目の前の彼が顔をあげた。私の予想に反してその表情は硬くて、想像していた淡い期待は打ち砕かれたような気がした。
「灰吏さん、ちょっと時間をください。僕は帰ってきてからしか返事をしません」
返答は予想外のものだった。死ぬかもしれないと言っているのに、帰ってきてから返事をするという。
「だからちゃんと生きて帰ってきましょう?ここで死ぬなんて僕が許しません」
やっぱりすごく、優しい子だ。
そして賢い子。私が生きて帰らなければならない理由を、いとも簡単に作って見せた。
「じゃあせめて、これだけは受け取ってくれますか?」
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