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ヒソヒソ
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「ちょっと…あれ」
「なんでここに悪魔なんかが…」
「でもさ、ミカ様が連れてるってことは客?」
「嫌だ、怖いわ。ちゃんと拘束してくれなきゃ」
「ねぇ、あの人どこかでみたことない?」
「確か…大学が同期の…クロスフォード?」
「あ、あれじゃなかった?次期課長だったけど、神様を裏切って堕天したっていう…」
車を降りるや否や、ヒソヒソと聞こえる声。私が最初に懸念していたとおり、あまりいい歓迎ではない。
冬夜も最初からわかっていたみたいで、すべて聞こえていないかのように平然と歩いている。
でも…春陽だけは、違う。
聞こえてくる言葉すべてに、嫌悪している。俯いて怒りをこらえるように、拳を握りしめている。このままいったら飛び出していきそうで、心配だった。
「大丈夫です。春陽、貴方の事ではありません」
庇うように肩を抱いてこちらへ寄せる。
「僕じゃなくても、灰吏さんや冬夜が悪く言われるのが、僕には耐えられない。何も知らないくせに」
俯いたまま、静かに怒りを漏らす。その優しさだけで、心が救われる。
最初から分かっていたせいで私に湧いてこない怒りという感情を、代わりにこの子が爆発させてくれる。
怒っている春陽には申し訳ないのだけれど、この空間で私は一人、喜びを覚えていた。
「どうぞ、こちらへ」
長いながい通路をひたすら歩いた後に、いっそうきらびやかなエレベーターへとたどり着いた。
「神様の執務室直通のエレベーターです。グズグズせずに早くお乗りいただきたい」
急かされて乗り込むと、それはすごい早さで上昇する。私もかつて神官庁の建物には入ったことがある。
でもここから先、神の領域は初めて。
滅多に天使でさえ入れないこの上層に、神はなぜ春陽を、まして魔族でさえある私たちを招待したのか。
神のみぞ知る…か
真意はどうだっていい。私はウリエラが無事でさえあれば、それで。
「到着しました。客人とはいえ、神様に失礼のなきよう」
「神様、ミカです。客人をお連れしました」
私たちに対するそれとは少し異なる声音で、ドアへと声をかける。
中から返事がして、バタバタという足音が聞こえた。
「あ!!皆さんお久しぶりです!長旅ご苦労さまでしたー。さ、どうぞどうぞ」
本当にこれが神様なのか
執務室から出てきた神崎さんに、変わりはない。促されて入った部屋に、ウリエラの姿はなかった。
「ウリエラくん今呼んできますねー」
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