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信用ならない
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「あ、冬夜さんなにか飲みますか?紅茶にします?コーヒーにします?それとも…俺の血?」
”俺の血”とかシャレになんねぇ。
以前起こした事件……この騒動が起こるきっかけとなった事件のことを、思い出してしまう。
「冗談ですよ!そんな顔しないでください!!」
笑えない冗談を言わないで欲しい。反応に困るというよりも、コイツが言うことによって何故だか無性に殴りたくなるから。
「で、なんで俺はここに呼ばれたの?」
「あぁ、今後のことについてじーっくりお話しようかと思いまして」
”じーっくり”といったその表情が悪人のそれだったことは見間違いじゃないと思う。
「今後のこと?俺はお前と話すことなんてないと思ってたんだけど」
「酷いですね…。だってそろそろ現魔王は引退でしょう?ちゃんと話といた方がいいかなーと思ったんですけど」
現魔王?
いるのは知っている。ただそれが誰とか興味無かったし、俺に関係があるとは思ってない。
「え、まさか俺言っちゃいけないこと言いました?だって次の代って冬夜さんですよね?」
俺なの?
「てことは現魔王って…」
「はい、御門 秋人。おふたりのお父さんです」
嘘だろ
「という訳で、事前に親睦を深めておこう! ってことですね」
またニヤニヤニヤニヤと。語尾に星を飛ばしかねない神崎を、きっと睨む。
こんなふざけた奴だけど神をやっている。その事実があるから簡単には気を抜けない。
「はぁぁぁ、もう俺たち充分親睦は深まってんじゃねぇ?ってことで、じゃ」
逃げるが勝ち。
そう言って部屋を出ようとした。しかしそれを、この性悪な神が許すはずがない。
「この数年で2人の天使が堕天してるんです」
ポツリと呟いたこの言葉は、虚空に消えることなく、空気を振動させる。
「どういう意味だ」
「そのせいで天界は今穏健派と過激派で真っ二つで…」
「その過激派って言うのが、いっそ魔族は全部滅ぼしてしまえっていう考えで…。行動を起こしたら魔界との全面戦争っていう恐ろしい事態が起ころうとしてるんです……」
何を言わんとしているか、理解ができない。
だから黙って先を促す。
「堕天したひとりが天界に戻ってきたってなったら話は違うと思うんですよねー」
ウリエラを置いていけという脅し…か
「ウリエラを置いていけ…ってことだよな。あいつの記憶が戻ったらどうすんの?自分から堕天するって言って出てく方が問題じゃない?」
言葉は丁寧に選ばなければならない。揚げ足を取られないように。
「それは大丈夫ですよー。俺がもう1回綺麗にしてあげればいい」
犯人はお前か
「お前がやったんだな?」
「あっはは、失言でした!そう、俺ですよ。神様は嫌なこともやらなきゃいけないのです…うぅ」
泣き真似をしたコイツはますます信用ならない。出来ることならもう関わりたくないのだけど。
「もう話は済んだだろ。俺はもう戻る」
再びドアに向き直り、引こうとしたその時、勢いよく迫り来るそれが、俺の顔面に直撃した。
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