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行ってらっしゃいのキス
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今日も僕はパタパタと走り回る。
神官庁の最上階、神様の階。
戦天使課課長の使いパ……伝令係として今日も1日忙しく働く。はずだったのに。
「ねぇ、ウリエラくん、俺と一緒に来ない?」
「どこにですか?」
「これからずーっと。君が朽ち果てるまで。……安心してよ、俺がちゃんと、その後も大事にしてあげるから。ウリエラくんのこ・と」
「……前もお断りしましたよね?」
あれから数日。記憶の整理もある程度できた僕はずっと、神様に口説かれている。
天界に残らないかって。
「残ってくれたら好待遇を約束するよ? ほら、俺と一緒にお散歩出来るなんて光栄なことだと思わない?」
「光栄なことではあるんですけど、辞退させてください」
「なんでさー」
「なんでって……」
「決まってんだろ。コイツは俺のだからだよ」
後ろから腕を回され、そこに力が込められる。突然のことに対応出来なくて後ろによろけるけどそれは心配ない。
冬夜はしっかりと受け止めてくれる。
「冬夜!!」
「だから言っただろ、コイツには近づかない方がいいって」
「そんな俺を変態みたいに……」
僕よりも背の高い2人が、僕の頭よりも高い位置で何やら火花を散らしている。
「でもウリエラくん、こっちに残るんだよね?」
「はぁ?家に帰ってくるだろ、ウリエラ?」
突然それが僕の方に向いた。
「えー……と、僕は御門の家に帰るつもりです」
「そっかー。残念だね、なあんて俺は言わないよ。君が折れるまでね!」
こんなやり取りがずっと続いてるわけだ。
今日もここで終わると思ってた。
「ウリエラくん、散歩に行こうか」
「さ、散歩ですか?」
「うん、そう。あの公園に」
少し振り返って、斜め上の冬夜の顔を見る。行くなって表情。
「冬夜さんのことで話があるんだけど……ダメかな」
冬夜のことで?
「じゃあ、行きます」
「ウリエラ?」
冬夜が心配そうな顔をする。
「大丈夫だよ。僕はちゃんと、帰ってくるから」
渋々でも、冬夜は離してくれる。ちゃんと信頼してくれるっていう証拠。
大丈夫。ちゃんと僕は冬夜のところに帰る。冬夜が僕を好きでいてくれる限り。
「そう言ってくれると思った。じゃあ行こうか。冬夜さん、ウリエラくん借りてきますねー」
「絶対元通りで返せよな」
「あははー、善処します」
どうしてこんなに二人の間でバチバチしてるんだろう?
「じゃあ冬夜、行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい。気をつけてな」
ちゅっと触れるだけのキス。それはおまじないみたいに、すぅっと溶け込む。
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