アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
脱出の手筈は
-
「俺らもここに来てしばらく経つんやけどな、どこにも出口があらへんのよな」
「出口がないって、じゃあどこから来たんだよ、俺たち?」
「ここに来る時も訳分からんうちに落ちてしもたからなぁ。一番の頼みの綱が冬夜なんやけど……よう分からんみたいやし、どないしてここに来たか」
脱出は絶望的だった。
こいつ、圭の話を聞く限り、この部屋は神崎にしか開けないということになる。
「そういや食料とかどうなってんの?」
「ご飯は運ばれてくるんですよ。その時に1回圭くんが闘ってみたんですが……」
「アイツものごっつ強くてなぁ。一人やと思って油断しとったら負けてしもたわ」
暗い冷たい部屋の中、和やかな雰囲気は対象的で。
「そうなんだな。じゃあ……」
「いや、冬夜がいたら行けるかもしれん。ヴァンパイアやろ?無敵やん!」
何が無敵やん!だよ。
「やめて、そんな目で見るの。あ、今日もまだ来とらんから様子見たったらええよ」
言われなくてもそうするつもりだったんだけど。でも最初に情報を得られたのはありがたい。
でも多分、そう遊んでる時間はない。
早く行かなければいけない。そう思うほどに多分正常な判断はできなくなってると思う。
その時、どこからともなく聞こえる足音。
闇を凝縮したような黒いローブに黒いマスクをかぶっている人形の物が、なにか袋を持っている。
「ほら、あれやでぇ。中に何が入っとるか分からんけど、多分天使かなぁ、匂い的に」
天使ではあるんだろうな。あいつのことだから多分信用できないやつはこんなところに置かないと思う。
天使であって、しかもあいつの信用に足る人物って俺一人しか知らないんだけど。
試しに行ってみるか?
ぐっと足に力を込め、跳躍。
袋を置いて立ち去ろうとしていたそれの背後をとる。腕を振り上げ殴りかかろうとするも、それは虚しく空を切る。
「なにしよん、冬夜!」
後ろで俺の名前を呼ぶ声が聞こえるような気がするけど、気づかない振りをする。
スルリと避けられたと気づいて、反撃として来るであろう衝撃に備える。
でも何もこない。
ただただ避けられただけだった。
相手するまでもないってか。
イラッとして捕まえようとするが捕まらない。いっそカマをかけてみるか。
「ジャン ミカだっけ?戦天使課課長の」
動きが止まるわけがない。
カマかけてもそれで揺らぐような器じゃ多分課長なんてできないだろうしな。
暗闇に消える直前、僅かに止まる。
「また明日、食料の配給に来ます」
その声は俺が予想していた人物のそれでしかなかった。
神崎って相当わかりやすいよな、そういうとこ。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
151 / 238