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公園と桜とボク9
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「なんでそんな、泣きそうな顔してんの?」
髪の毛から水を滴らせ、かーくんはバスルームから出てきた。鏡越しに見える引き締まった体は、実戦で使うために作り上げられたものだ。水泳をするために鍛えているボクとは違う種類の筋肉のつき方をしている。
どちらがいいなんてことは判断できないけど、ボクはかーくんの体が好きだ。浮力を得るため体脂肪率を下げていないボクとは違って、筋肉以外の全てを削ぎ落としたみたいな、男らしい体。
「泣きそうな顔してますか?」
「いや、今はいやらしい顔してる。人の体を見て何想像してるんだか」
「いやらしい顔なんてしてませんっ!」
鏡に映る自分を覗き込む。いやらしい顔……してた。ああ、もうボクってば何やってるんだろう。
「まぁいいや。シャワー浴びてきなよ」
「あのっ、変な想像まではしてませんからね」
言い訳の途中でかーくんにバスルームに押し込まれ、扉が閉まる。抗議の声を聞く気はないみたいでドライヤーの音が聞こえ始めた。
生臭いからシャワーを浴びろということなのか、最後までするつもりなのか、結局わからなかった。
シャワーを浴びるだけならスーパー銭湯にでも行くかと思い、後ろも綺麗にする。これで違ったら時間をかけた分何をしてたのかわかるだろうし、恥ずかしいな。
「上がりました」
髪を乾かしてからベッドまで行くと、かーくんは目を閉じて横になっていた。
そのまま時間いっぱい寝るのだと思い、かーくんを起こさないようベッドの端に座る。
「ふぇっ」
目を開けたかーくんに腕を引っ張られ、体勢を崩した。視界がグルンと回り背中にスプリングの弾力を感じる。
「そういえばさ」
「……はい」
感情の読めない声が降ってくる。最近では読めないことは少なくなっていたので、久しぶりの感覚にゾクリとした。まるで薄ら笑いを浮かべて鷲尾を追い詰めていた時みたいじゃないか。
「トモさんはさ、誰のことが好きなの?」
「それはっ、あの……言えません」
ボクが好きなのはかーくんだ。だけど重いと思われたくなくて、好きとは言えないでいる。
「勘違いじゃなければ、というか勘違いじゃない自信あるけど、俺のこと好きだよね」
この間読んだばかりのBL漫画のような展開なのに全く喜べない。掴まれた腕が尋常じゃないくらい締め付けられて、怒りがそこから伝わってくる。怖くて目を見ていられず、顔を背けた。
好きだって知ったら、かーくんはどうするつもりなんだろう。重い相手は面倒くさいから、セフレとして側に置くことすらやめるということだろうか。
腕を掴む力が強まり、骨が軋んだ。痛くて体をよじるけどシーツに縫い付けられた腕はビクともしてくれない。
「俺のことが好きなら、なんで簡単に他のやつに好き勝手されてんだよ」
かーくんの声にやっと感情が滲んだ。
悲しみとも怒りとも言い切れない感情を見せる理由が、ボクにはわからなかった。
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