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プロローグ1
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立秋をとっくに過ぎたとはいえ、まだ暑い日が続いている。職員さえもまばらな朝の校内は静まり返っていた。
警備員室の脇を通る。
ガラス越しに会釈をしてきたのは、ボクの働く私立高校の警備員である長谷川望さん。
長谷川さんのことを、「氷の貴公子」と若い女性職員が呼んでいるのを聞いたことがあった。確かに、彼のことを上手く表現している言葉だと思う。
長谷川さんはハッと息を呑むほどの美人なのに、決して表情を崩さず、笑わない。人嫌いだという噂もある。
まるでドライアイスみたいで、触れたら凍傷でも負いそうだ。
ボクは物心ついた頃には男の人しか好きになれなかった。体育教師をしているくらいだから、
『心の中は乙女なのよ~』
なんて言葉が似合うような可愛らしい容姿はしてないけど、好きな人には甘えたいと思ってしまうたちだ。
おそらく長谷川さんは、ボクとは違ってノンケ(異性愛者)だと思う。だってノンケしか好きになれないボクが好きになった相手だから。
それ以外の理由はない。
そもそも大して話したこともないのに判別のしようがないけど、近付いたらきっと傷を負う。
心の奥の奥深くまで。
それなら朝と夕方の一日二回、挨拶出来るだけでいい。
ボクは傷付くのが怖い。
安定した仕事を失うのも、怖い。
そう思いながら、心の隙間を埋めるように、たびたび発展場へと向かう生活を送っている。
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