アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
不毛な関係と恋心15
-
「……あの、忘年会の件なんですけど……、出ませんよね……?」
言うだけ言ってボクは踵を返す。
先ほどの女性教諭には「説得したけど無理だった」と伝えればいいだろう。
歩き出そうとしたものの足が前に進まない。それもそうだ、長谷川さんに肩を掴まれているんだから。片手で掴まれているだけなのに体がビクともしないなんて、長谷川さんの握力は一体何キロあるんだろう。
「出ます」
ボクの肩から手を離しながら、長谷川さんは言う。
“仕方ないから出る”
そんな気持ちが滲んでいるような気がして、ボクは振り向いた。
「無理はしなくて、大丈夫ですよ?」
「確かに無理はしてますけど」
「なら……」
「他の先生に頼まれたんでしょう。今までも何度か誘われていたんです。もう諦めて出たほうが楽な気がするので、出ます」
「はぁ……」
前のボクだったらきっと、長谷川さんと話せる機会が出来て喜んでいた。
だけど、さっき長谷川さんに掴まれた肩がジンジンと熱くて、勝手にかーくんに申し訳ない気持ちになる。かーくんからしてみれば別にどうでもいいだろうけど、ボクにしてみれば浮気しているみたいなものだ。
「何か不都合でも?」
長谷川さんに問われ、ボクは首をぶんぶん振る。
頼まれたとはいえ、誘いに来たのはボクだし、参加してくれるのならば何の不都合もない。先ほどの先生にも良い報告が出来る。
「いえ、ありがとうございます。後日厚生部から忘年会の正式な文書が配られると思うので、時間やお店はそれを見て確認して下さい」
事務的に言って、ボクは元々の行き先であった体育教官室に戻った。
◇
忘年会といえども、終業式の間際になると校内が慌ただしくなるので、第二週の金曜日に会が開かれた。
場所は温泉旅館の広間で、そのまま泊まる人も多いし、飲み会だけ参加して帰るのも自由だ。
席は各自決まっているが、理事長の挨拶が終わったら各々酒を注ぎに席を立ち始める。
今年27歳になったばかりのボクは、この学校ではしたっぱのほうで、真っ先に席を立った。
唯一年下の女性教諭(長谷川さんを誘うように言ってきた先生)は、理事長や年配の先生からではなく、長谷川さんに真っ先にお酌をしに来ていた。
立ち上がってすぐ、ボクの席が塞がれる。
(理事長より先にお酌されても、長谷川さんも立場的に困るだろう)
その場で注意しようかとも思ったが、男のボクが言うのは角が立ってしまうかもしれない。あとで厚生部の部長をしている年配の女性教諭に相談してみよう。
目の端に長谷川さんと若い女性教諭を捉えながら、ボクは理事長から順にお酌をして回った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 52