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変わりゆく2
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◇◇◇
クリスマスが終わり冬季休業に入ったものの、校内は生徒で溢れていた。補習授業を受けなければならない生徒がたくさん居るからだ。
ボクの受け持つ体育も含め、実技教科は参加しないことには全く成績が付けられず、補習を受ける生徒の人数が多い。
若いから、という理由で体良く補習授業の担当を押し付けられたボクは、寒々しい体育館の中で大勢の生徒を相手にしていた。
リーゼント、オールバック、スキンヘッド。ボクたちの時代ですら居なかった昭和時代のヤンキーたちが目の前に居る。ヤンキー漫画に憧れて服装だけ真似をしているなら可愛げもあるけれど、一癖も二癖もあるやつばかりだ。
「オラそこ、サボるんじゃねぇぞ」
ボクは声を低くして竹刀で体育館の床を打ち付けた。ざわついていた体育館が少しだけ静まる。
内心ドキドキしながら、辺りを睨むように見回す。
……怖い教師のふりもなかなか大変だ。
補習が終わり、使っていた用具を体育用具室に片付けていると嫌な視線を感じた。
恐る恐る振り向けば、いやらしい笑みを浮かべた生徒が三人立っている。
「何だ?」
平然を装って訊ねる。逃げられるよう、爪先は自然と出口の方に向いていた。
「俺たちね〜、クリスマスなのに野郎ばっかで過ごしたんだよねぇ。んで、何で女っ気がねぇのかって話し合いしたわけ」
不穏な空気は漂っているものの、ただ話をしているだけだ。床に置いた竹刀を手に取るなんてあからさまなことは流石にできない。
「それが俺に関係でも?」
うちの学校に通う生徒は、言ったら悪いけど、世間一般の常識というものが通用しない。恐怖で上擦りそうな声を意識して低くする。
生徒の一人がアヒャッと笑った。
「うちのガッコーにマトモな女が居ないせいじゃないかってことになってさ。居てもブサイクとババアだけだし。だから――」
三人は示し合わせたように下卑た笑みを浮かべた。
ボクは手を強く握りしめる。どう考えても、「他の学校の女の子と仲良くするために真面目になるよ」なんて爽やかなことは言わないだろう。
「だから、何だっていうんだ。用件があるならさっさと話せ」
どうか、誰か通りかかって欲しい。そう願いながら訊ねる。願いは虚しく、都合の良いことはそうそう起こらない。
「まぁ、詰まる所、俺らこのガッコーのせいで飢えてっから、穴貸して。ってこと」
「……やめ――!」
三人は慣れた手付きでボクの口を塞ぎ、手を縛った。足だけ自由なのは“穴を借りるため”だろうな、と理解する。
「――ん゛ん゛ん゛!」
叫んでも届かないだろうと思いながらも、それでも叫ぶ。やはり声は届かないようで、外からは何の反応も無かった。
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