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変わりゆく9
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ボクの目からは涙がポロポロとこぼれていく。長谷川さんに嫌われた。幻滅された。当たり前だ。こんな格好を晒してボクは何をしているんだろう。
「まぁ、問題が起きなければ俺には関係のないことですけどね。三木先生が生徒とお遊びするような人でも」
「そんなっ……、酷い言い方しなくてもいいじゃないですかっ……!」
しゃくりあげながら、全く否のない長谷川さんに当たる。もはや頭の中が混乱しすぎて自分でも何を言っているのかよく分からない。
長谷川さんは強く拳を握りしめた。
「酷いってどっちがだよ。俺のこと散々好きな振りしておいて、ガキ相手にラリって腰振ってヨガってる淫乱じゃねぇか」
いつも丁寧な長谷川さんの口調が変わった。まるで、長谷川さんじゃなくて別の人のようだ。
「……え、かーくん?」
どうして口からその名前が出てきたんだろう。長谷川さんがかーくんのわけないのに。
だけど、声が……、ボクを見下ろす顎のラインが、目の前にある手が、長谷川さんとかーくんが同一人物であることを否定してくれない。
どうして、ボクは気付かなかったんだろう。目の前の人は――
「今さら気付いた?」
――かーくんだ。
体が震える。寒くはない。長谷川さんに嫌われたってことは、かーくんにも嫌われたってことで……。
これからどうして生きていけばいいのか、なんて大げさだけど、ボクが日々を乗り切るためにすがっていた“恋人ごっこ”さえも出来なくなった現実が怖い。
足から力が抜けてヘタっと床の上に座り込んでしまう。
「どうしたら――」
嫌わないでくれますか? なんて虫のいいことは言えない。
「……ヒック……ありがとう、ございましたっ……! 信じて貰えないかもしれないですけど、ボクっ、かーくんと出会ってからはずっと、誰ともっ……!」
ボクの口からはこの後におよんで言い訳が溢れてくる。
かーくんはポケットからティッシュを取り出してボクに投げつけた。勢いよく顔に当たり、頰がヒリヒリと痛む。
「とりあえず、性病の検査してきて」
「……?」
「本気で誰にでも足開くって思ってるわけじゃないから。ドラッグ使われたと思い込んでラリるなんてバカだとは思うけど」
深く深くかーくんはため息を吐いた。
「検査して何もなかったら……?」
「……その時は、気が向いた時だけ相手してあげる」
かーくんの気が向いた時だけ――要するに、今まで通りだ。
「ありっ、ありがとう、ございます……!」
「はいはい、わかったから鼻水かんで。今、体拭くタオル持ってくる」
呆れきったかーくんの背中を見送る。
関係が終わらずに済んだことに、ボクはほっと胸を撫で下ろした。
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