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5月21日
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小学校の頃は、いつも一緒にいた。
「圭っ、もっと早く走れ!遅刻するぞ!」
「あははっ、無理!」
「無理じゃねぇ!お前が寝坊したせいだろうが!」
「あははっ、ごめーん!」
一番の仲良しだって、信じて疑わなかった。
その関係が崩れたのは、中学の頃。
伸ばした手は、振り払われた。
「気持ちわりぃ…こっち来んな!」
理由も分からないまま、近づくだけで睨まれ、話しかけても返ってくるのは罵声ばかり。
「…」
仲直りできないまま、卒業した中学校。
諦めきれずに、追いかけた高校。
「…」
そこで、関係は完全に壊れた。
「ぎゃはははっ!」
「がっ、は…」
「ほーら、もう一発!」
「ぐっ」
「こっちも、おら!」
「…ぅ、」
仲間外れと嫌がらせ程度だったものは、いじめ、と誰しもが認識するものへと変わり、高校三年となった今では激しい暴力を伴うまでに発展した。
「あ、久我さん」
俺たちの関係は、いじめの加害者と被害者。
そんな温度の無い関係へと変わってしまった。
「…マヌケな面だな、圭」
「っ、りひ、と…」
「お前が悪いんだぜ?消えろって、俺は言ったはずだ」
「ぁ、」
「何度も、な」
理人は母親の影響か、昔から格闘技に強かった。
「げっ、ぱ…」
他の誰よりも重い、腹部への衝撃。
込み上げる嘔吐感を堪えきれず、胃の中身が逆流する。
中身と言っても、胃液以外は何も無かったけれど。
「うわっ、吐きやがった!汚ねぇ」
「でも、なんかエロ…」
「なんだお前男でも勃つのかよっ!」
「ばっ、ちげぇよ!」
「まぁ確かに、顔だけ見れば女にも見えなくはねぇよなー」
「あははっ、お前らホモかよ!きしょー!」
「あ、久我さん何処に行くんですか?!」
ふと、腹部に掛かる圧力が消えた。
「女のとこ」
遠ざかる足音に、安堵よりも寂しさがこみ上げる。
「ぁ…」
今日もまた。
伸ばした手は届かない。
「理人…」
そして、この薄汚れた空き教室に居るのは一人になった。
「…捨て、ないで」
その言葉が誰に届く事はなかった。
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