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ハル 続~オリジナル少年少女
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元の町にはいられなかった。
うちの家族は逃げるように町を出た。
一時田舎に引っ込んだけど、田舎はかえって目立つのだ。
少し都会に引っ越し直し、姓は母方の祖母のを借りて、僕はなんとか高校を卒業した。
俗に言う『いい大学』も目立つから、ほどほどの大学で手を打った。
日常。
いくら異様な事件でも、仮にも僕は被害者だ。
マスコミの攻勢は、さすがにかなり弱まっていた。
でも僕の中に、事件は確実にある。
朝食は出来ていてもママはその場にいない。
僕と顔を合わせたくない。
一つには自分がリエカを追い出したせいだと自責してるからだけど、もう一つの方が実は大きい。
僕を彼女は見たくないのだ。
男なのに三週間も女の子にされていた僕。
リエカを守れなかった僕。
女より具合がいいまでいわれていた僕を…
しかも僕には後遺症が残った。
女装癖だ。
性的にはちゃんと男なのに、女の姿でいたいのだ。
意味はわからない。
あの三週間は苦痛で苦痛でたまらなかった。
にもかかわらず、今も自分の中に残る、女でいることの安心感。
奴らに使われてる限りは、たぶん殺されないだろうという、思い込み?
それしか僕を支えるものはなかったから。
そうなのだ。
僕は生きていたかった。
なりふり構わず僕は生きていたかったのだ。
二週に一回カウンセリングに通ってるクリニックは、隣町にある。
事件直後から僕の聞き取りに立ち会ってくれていたそのカウンセラーさんは、田舎時代にも、今も、必ず隣町まで出張してきてくれていた。
隣町、というところが優しさで、僕の生活圏を脅かすことは決してなかった。
毎週カラダをあけられなくてすまないね。
必ずそういってくれた。
実の母が僕の顔を見るのも嫌悪してる中で、僕には彼がいた。
救いだった。
でもその人は今年、本を出した。
タイトルは「少女」。
帯にはこうあった。
『あの少女殺し事件から△年。沈黙を破って語られる、生存少年の衝撃のいま!!』
そう。
彼はこの日のために、僕を支え続けてきたのだ。
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