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ハル 続の続~オリジナル少年少女。少年目線
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僕の承認を得ないで出版されたその本は、出版社側の自粛で店頭からすぐ消えたけど、水面下では売れ続けているらしかった。
初版で買った人の直取引。
僕は全く外へ出れなくなった。
でも大学生だ。
単位とらなくちゃ卒業できない。
僕は勇を鼓して学校へ出たけど、みんなは僕を遠巻きにするだけだった。
午前の講義を突き刺さる視線と囁きかわしの中で受けた。
次の講義受ける勇気はもう一%も残ってなくて。
帰ろう。
と席を立ちかけたとき。
「ここあいてる?」
初めて聞く声と、初めて見る顔が、僕の横にいた。
瀬尾(せのお)源治郎。
いかつい名前の通り、ちょっといかつい感じの男だった。
「結構講義さぼって来ててさ。ノートある?」
とか、
「誰ゼミラクよ。マスコミ嫌いがいいな。マスコミウケする教授ってチャラいだろ」
とか、ひとりで勝手にしゃべってる。
利用か好奇心かわからないから僕は黙ってる。
瀬尾は気にしない。
購買行こうぜ。
学食行こうぜ。
やっぱ仮説のとこだけはノート貸してくれ。
僕の沈黙は続く。
見かねた屋島という学生が、瀬尾に、瀬尾だけに声をかけた。
あんまりそいつと関わると、同好の士だと思われちゃいますよ。
瀬尾は何もいわず、ただ屋島を普通に見ただけだった。
僕は苦しい。
だんだん瀬尾を信用していく自分がいる。
気づけ則之。
カウンセラーだってずっとちゃんとした人だったじゃないか。
だから……………
おはよう
お疲れ
どうしてた?
じゃあまたな
挨拶してくれるだけなのに、心はゆっくり癒えてゆく。
挨拶は二人になり、三人になり、学年末には屋島さえ、おはよう、お疲れ言ってくれるようになっていた。
瀬尾源治郎。
何者?
彼は知り合い?
友達?
僕にとって彼は何?
彼にとって、僕は何?
ともにファミレスで徹夜勉強したテストで、僕は席次一位取った。
瀬尾は二位だった。
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