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「ここの美術館に行きたいんですね?」
渡された、一冊の日本美術パンフレット。
これを見ながら、もう一度確認する。
「そうだ。分かるか?」
地図から見ると、ここから一駅ほどだった。
そう分かりにくくは無いんだろうけど、迷ったら可哀想な気がしたので、道をうまく教えられるか少し考える。
それにしても綺麗な日本語だ。
なんだか簡潔過ぎるけど。
しかも、パンフレットのチョイスが日本の水墨画や花瓶みたいなので、渋すぎる!
こんなディープな日本観光をしている外国の人は、きっと日本が好きなんだろう。日本語だって勉強したくらいだろうから。
俺も今日は秋用の洋服を買いに来ただけなんだし、予定もあとはそんなにない。
よっしゃ、俺も少し位は、功徳を積むか!…なんて親切心がほんの少し。
本当は、この人ともう少しだけ一緒に居たいと思った。
「ちょっと、歩きますから、目的地まで一緒に行きましょう!」
彼は一瞬、目を丸くしたが嬉しそうに言った。
「そうか、良かった。助かる。」
とびきりの笑顔を見せてくれた。
なんだろう、俺は女子かって位、胸がキュンキュンした。
流石に、日曜日の銀座はなかなかの人混みで、男が二人で並んでいるとぶつかりそうになる。
彼はさり気なく、俺の腰を手でそっと引いてくれたり、エスコートに慣れているみたいだ‥手も大きいから、両手を広げたら俺の身体もすっぽりと隠れる位だ。けど‥ぴたっと足を止めて抗議した。
「あの、俺、大丈夫ですからっ!いつも一人で歩いてます。」
正直、とても恥ずかしい!
すると、無言で俺の顔を見ながら口を少し引くと、腕を引っ張って手を繋がれた。
えっ、ええーー!!
「これなら心配ないな。歩けるか?」
いやいやいやー!まてよおい、と思いながらも、彼の続く言葉に納得するしか無かった。
「実はあまり、時間がない。14時に到着したい。」
今は13時45分を過ぎた所で、迷わなければ余裕だけど、この時間は確かに不安だよな。
恥ずかしがって、ちんたらしている時間はないと頭を切り替えて、彼の手を引いて会場に向かった。
何とか時間内に現地に着くと、人はまばらで入場料も特に無さそうだった。
身なりのいいおじさんが笑顔で彼に近づいて来たと思ったら、後から来たこれまた外国人が話し掛けて出て行ったり、ここは外国人達に人気のスポットなんだろうか。
館内は、上品な日本の美術品が綺麗に並んでいた。
掛け軸や壺が、目の前でゆったり見られるように置かれ、何処かでお香が焚かれているのか、いい匂いがする。
初めて来たけど懐かしい、そんな気持ちになっていたが思い出した!
「あの、あの、もう手を離してくださいっ」
俺の慌てた様子に動じる事もなく「あぁ、」と、握っていた手を離すと「どうやら間に合ったな。おかげで助かった。」
まるでご褒美でも与えるように、俺の頭をポンポン叩いてから優しく撫でてきて、しまいには俺の髪を指に絡めて遊びだした。
いよいよどうしていいか解らず、真っ赤になりながら俯いてしまった。
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