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会場の入り口には、もう作品らしきものが展示されていて、すぐ鑑賞出来るようになっていた。
「では、俺はここで。」と、この場を離れようとしたら、また手を掴まれた。
彼は簡潔に、聞いた。
「帰るのか?」
「もともと道案内だけのつもりだったし、日本を楽しんでくださいね」
そう言って、腕を離そうとするとぎゅうっと強く握られて、またドキッとした。
俺の心臓、煩い。落ち着け。
「名前を、まだ聞いていない。礼もしていない。」
「いやいや、お礼なんてされるほどの事はしていないし‥「名前は?」
被せるように聞いてこられて、うっかり
「園村士恩(そのむらしおん)‥‥です‥。」と答えてしまった。
「シオン‥。シオンか、いい名だ。」何度か俺の名前を反芻して嬉しそうにも見える‥(いや、俺がそう思いたいだけなのかも知れないけれど。)
「俺の名前は‥‥」眉間に皺を寄せ始め、考え込む。
えっ、名前で一瞬躓くのか。
「いや、長いのだ。ハミドと呼んでくれ。」
あっ、なんとか2世とか3世とかのやつかな。
「分かりました‥じゃあ、ハミドと呼びますね。」
って、言いながら、もう二度と会うこともないだろうと思った。
「メールアドレス、電話も。」
「えっ?」
携帯電話を見せられ「俺は赤外線をしなくてな、教えろ。」
決定事項のように命令口調で言われてしまい、断りずらくなる。
「えーと、ハミドは来日した、旅行者ではないんですか?」
と一応聞いてみた。
「ん?去年からこの国に留学している。あと半年で卒業する。」
「学生さん!?い、いくつですか?」
「今年17歳になった。」
「えぇー!俺の一個上、もっとずーっと年いってると思った‥」
ハミドは、嫌そうに舌打ちしながら「電話を出せ」と乱暴に言って、俺の出した携帯を取り上げると、番号とメールアドレスを素早く打ち込み、多少引きずられるように、それらを交換した。
満足そうに、俺の携帯を放って返すとハミドは「礼は今度。必ず、するからな。」と、笑顔を見せた。
その笑顔があまりに綺麗で、ドキッとしていると、その顔がどんどん近づいてきて、フワッと唇にキスをされた。
ちょっとビックリしたけど、これが向こう流の挨拶なら、と大人しく受けた。
最初は、優しく啄むようなキスだったから気持ち良く、「ふっ‥んんっ」っとつい声を漏らしてしまった。
すると突然、グッと深く後頭部を掴まれ唇を押し付けられ、舌を深く入れてきた。
引き離そうにも、力は強くてビクともしない。
舌は、俺の口の中を我がもの顔で味わうように蹂躙し、呼吸が出来なくなって生理的な涙が出てきてもやめてくれない。
もう観念して、その行為を受け続けるしかなくなった。身体から一気に力が抜けてくたっと落ちそうになった途端、慌ててハミドが受け止めてくれた‥。
「っと。大丈夫か、立てるか?」
ハミドは平然としているのに、俺だけハアー、ハアー情けないことだが、何とか呼吸を整え、涙を拭いながらコクコク頷きつつ(この挨拶はヤバイ!)と驚いた。
しかし不思議と不快さは無かった。
「では、またな。」ぎゅうっと再度抱かれ、頭をポンポンし、撫でてきた。
俺はドキドキしながら、彼をろくに見ることもせず、逃げるように会場をあとにした。
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