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学校に登校すると、早速図書館に行った。
水墨画の見方みたいな本をざっと開くと、絵の写真の他に、説明書きがびっしり書かれていた。
「なるほど、さっぱり分からんっ!」
低く唸ると、本を戻した。
あぁいうのの良さはさっぱりだが、ハミドの話し方ぶりからすると、ほんとは聞いてあげる友達とかいたら嬉しいんだろうな。
そう思ってチャレンジしてみたけれども、やっぱり挫折した。昨日の美術館も水墨画と日本画と、あとはなんの壺だったかなぁ‥書道のお手本にみたいに綺麗な字が書かれている掛け軸もあったけど、色んな作品が展示されていた。
今日はハミドが学園まで待ち合わせに来てくれるらしいから、少しだけでも話についてってあげたかったんだけど、知識は一朝一夕に身につくものでもないらしい。残念ながら今日学べなければ意味がないので、そっと本を戻した。
京都関連の本を見ると何故か京都のおばんざいなんてのがある。向こうの郷土料理の作り方みたいだ。
昨日はハミドが京都に行った事があると話していた。自分も去年修学旅行で行ってきたけれど、有名な観光地をまわって、お土産を買うくらいしかしなかった。
もうちょっと興味があれば話に乗ってあげられたかもしれないのに、何を見たかなんて殆ど覚えていないなと後悔する。
でも、京都の町家のお料理かぁ。へぇ、こういうジャンルがあるんなら面白いな、こてこての和食だけど、案外素朴でいいな。夕食は父さんにでも食べさせてあげようかなんて、早速借りてみた。
教室に戻ると、クラスメイトで友人の佐野真斗が(サノマサト)が「シオン、シオン〜!」と泣きついてくる。聞けば他校の幼な馴染みに、彼女が出来たらしい。
昨日はその報告をされて暫く遊べないからと断られ、彼女が出来たくらいで付き合いの悪くなった幼馴染の愚痴を、学校の誰かに聞いて貰いたくて仕方なかったのだ。
「シオン、俺らも彼女とか作る歳になってきたんだな!でも、俺は彼女が出来ても友人付き合いを疎かにするつもりはないからな、お前もそうしてくれよ。しかし男子校で彼女ってどーやって作ればいいんだろうな。家でゲームに興じてる場合じゃねぇな。」
「それは真斗だけだろう〜それに早い奴は中坊ん時から彼女なんていたよ」
「マジでか!なぁなぁ、そういうのって中坊レベルだとどこまですすんでんのかな」
「さぁ‥映画とかカラオケとかショッピングモールに一緒に行くとかじゃねーの?」
「手ぇつないだり、キスとかもすんのかなぁ!」
「はっ?」俺は固まる。
「だってよ、付き合うって事はそういうのもちゃんとするもんだろう。付き合うってどの辺位まで進んだら、俺の彼女!って付き合った事になるんだろうなぁって、思ってよ。」
至極真面目な顔で真斗は手をつなぐところかキスかで考え出す。
手をつないで道を歩いたり、唇を塞がれ、腰が抜けたり‥‥?
昨日の出来事を引きずり出されたようでどんどん体温が上昇していき頭が沸騰しそうになった。
「しっ、知らねーよ、さっきからお前なんなんだよ、朝からやらっしー奴だなっ!」と、気がついたら怒鳴ってしまった。
真斗はきょとんとした顔で「えっ、やらしい‥?」と、言われた言葉に首をかしげる。
「そーだよ!!そういう変な事朝っぱらからゆーなよなっ!」
「えっ、ええっ!ちょっと待て。お前なんでそんなに顔真っ赤にしてんだよー‥」
しつこく聞いてくる真斗にいい加減にしろと突き飛ばしたくなったところで先生が来た。
朝礼も始まり一日が始まる。
下校時間になったので、荷物を纏めて校門の前に行くと、ハミドはまだ着いていなかった。時間を確認するとまだ10分前だ。
最寄り駅からは少し歩くし、駅の待ち合わせで提案すれば良かったと駅の方角に寄って歩きながら考えていると、突然頭上がすっと暗くなり後ろから抱きしめられた。
「シオン‥待たせたな」と、腰にくるセクシーな低音ボイスが耳に響き、振り向いて確認するまでもない。
今日も相変わらずの、ハミドだ。
彼の挨拶の仕方には、一生慣れそうもない。
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