アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
10
-
行きたいところがあるからと、駅と反対の方角に歩いて行ったら、青くてピカピカの車が待っていた。
運転するのはハミドの友人で、カリフさんと言うらしい。
ハミドは迫力ある美形けれど、カリフさんは物腰に品があって柔らかな笑顔が眩しい褐色の肌だが髪と瞳はブラウンで少女マンガにでも出てそうな王子って感じ。
類は友を呼ぶのだろうか。
それとも外人さんて、皆こんなにキラッキラしてるのかな。
戸惑いながらも「ナイストゥーミーチュー、アイアム、シオンソノムラ‥」と声を掛けたら、凄い速さの英語で返され、思わず仰け反った。
また「えっ、えーと、ええーと」と、単語が浮かばずにパニックになると、耳元でハミドが安心させるように「カリフは日本語を話せる」と囁いてくる。
えっ?と、そちらに顔を向けると目を細めた笑顔で頭をポンポンと撫でられ、今度はカリフさんに母国語で何か話しかけた。
一瞬顔を顰めたカリフさんは僕に気がつくと笑い掛けて小さく手を振ってくれた。
「ふふ、私は可愛い男の子を見ると、ついからかったり苛めたくなってしまう質でございまして。ご気分を害されていないと良いのですが。」
まるで教科書に出てくるままのイントネーションと完璧な日本語に、もう一度圧倒されてしまった。
人懐っこいけれど、たまにこちらを観察されているような視線を感じて、少し落ち着かない。
そうそう。落ち着かないと言えば、これもだ…。
ハミドは俺に会ってからずっと手をつないでいて、車内では指まで絡めきゅっと密着してくる。
反対の手は僕の唇の輪郭を形を確かめるようにそっとなぞり、熱っぽい視線を送ってくる。
「ハミド、いつまで手を握っているのですか。シオンが大層気持ち悪がっておいでのようですよ」
「気持ち悪いのは、ミラー越しにこちらを見るお前だ。」
「えぇ、ミラー越しでも見えるあなたのヤニ下がったその顔は車を降りて外に出たらきちんと整えてください。シオンも嫌なら嫌ときっぱり断らないといけません。ハミドは嬉しいのだと勘違いをしていますよ。このままではもっとエスカレートしてセクハラが酷くなりますよ。」
ええっ!!やっぱりこれは挨拶なんかじゃなくてセクハラなの!?と、慌てて自由な方の手でハミドの腕を押し、何とか手を引き離す。
ハミドは手を離された瞬間、軽く俺を睨むと運転席に母国語で何か怒鳴りつけた。
カリフという単語しか聞こえなかったが、カリフさんはこの罵声に全く動じる事も無くしれっと何かを言い返している。
それが更なる火に油を注いだようで、激昂していくハミドが幼く感じる様子を見ながら、この二人の仲の良さにちょっぴり疎外感も感じてしまう。
ふと、見慣れた景色に俺の家の近くにきている事が分かった。
僕がたまに行くショッピングモールで、それは黙っておいた。
モールのビルから専用の入口みたいなところに入っているけど、うちには車がないから初めて入ったところみたいだ。
車を止めると、カリフさんはすぐ後方の扉を開けて、ハミドは当然のようにそこから出る。
呆気に取られて「お坊ちゃまと執事みたい」と悪気なく感想を口にしたら二人共ハッとしたように表情が硬くなり、言ってはいけないことをいってしまったのかと気まずくなって口を噤んだ。
するとカリフさんはふふっと綺麗な笑顔でドアの前に手を差し出し「確かに、ハミドおぼっちゃまはいつもふんぞり返って、偉そうですからね。さぁどうぞ、シオンおぼっちゃまもエスコート致しましょう。気をつけてお出かけしましょうね」と、おどけたようにいってフォローをしてくれた。
このモールは裏側に運河が広がり、クルージングをすることが出来る。
もっとも、俺は一度も行った事はない。
普段は金持ちっぽい人たちが乗っているのを見かけたことくらいはあるが、今日船着き場に停まっていたクルーザーは、それらよりも遥かに大きく水上バスのように広い。
ボディーも近未来のような豪華さで大型船を通すために、いつもはある橋も今日は跳ね上げられている。
「シオンに1つめの礼だ。」
ハミドはなんてことないように素っ気なく言った。
「えぇ!このクルージングって俺達も客なんですか!?」
こんな豪華な船でお礼されてしまうのは貰い過ぎたと慌てているのに、ハミドは不思議そうな顔で聞いてくる。
「船は嫌いだったか?」
「いや、嫌いってわけじゃないんですが‥」
「では行こう。」
腰に手を当てられ、当然のようにエスカレートを受けて船に乗せられた。
カリフさんはもう船の中で待っていて、俺達が乗った事を確認した瞬間、ゆっくり運河を出発した。
デッキで涼んでいると、カリフさんが飲み物を持ってきてくれた。
ハミドが受取り、またカリフさんがどこかに出かける。
中身はホットコーヒーだ。
船の構造がイマイチ良くわかっていないが、売店もあるんだろうか。
礼をいって一口飲むと、甘かった。お砂糖とミルクがっている。
ん?このコーヒー、どこかで飲んだ事があると不思議に思うと、またカリフさんが紙のお皿に3つドーナツを持ってきた。
そ、それは…もしや…
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
10 / 685