アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
18
-
side ハミド
シオンがマンションに戻り、自分の部屋を開けて入る所を見届けると、マンションから数歩、歩いた所で車が止まった。カリフが降りてきて、俺の為に扉を開ける。乗り込むと、運転席には昨日シオンを尾行したシェザードが担当していた。
『首尾は、いかがでしたか?』
楽しげに聞いてくるが、笑顔を作りながらも青筋を立てられるとはお前もなかなか器用なやつだ。それに免じて、喜びそうな成果を教えてやろう。
『フラレた。』
意外そうに、目を丸くしながら首を傾げ何か言いたそうだったが飲み込んでいた。
『そうですか‥。‥まさか、もうシオンは諦めるのですか。明日も‥?』
このカリフの反応は俺も意外だ。てっきり突き落とすような嫌味の一つでも吐きそうなものを今日は明らかに心配されている。
『いや、明日は何も約束しなかった。』
『そうでしたか‥それは安心しました。あまりお元気無いようにも見受けられますが、どこかお具合でも悪いのですか?』
確かに、自分でも驚く程に立ち上がれない。失恋したのだから。どうやってここからシオンの心を動かせるのか、その打開策もまだ見つからない。
『少し、疲れただけだろう。で、何かあったのか?』
『はい、昨日の運転手ラジットですが、ビンゴでした。彼の留守中に、部屋の中を捜索したところ、ハミド殿下の公務スケジュールと思われる不審なメールが、10日に一回の頻度でイギリスのサーバーを経由し、同じアドレスに送信されていました。』
『10日に一回‥』この意味を考えたが、カリフに先を促した。全部聞いてからのほうが手っ取り早いだろう。
『ラジットがハミド様のお車を洗って戻った所を、私とシェザードで確保し、事務所で話しを聞こうとしたのですが‥。自害しました。』
またかと大きなため息を吐くと、目を閉じて聞いた。
『死因は?』
『歯の中に毒薬を仕込んでいて、二人ががりでは逃げ切れないと判断したのでしょう‥。何も聞くことは出来ませんでした。今は所持品から手掛かりになりそうなものを探すことになります。本人に聞けない分、少々時間か掛かりますが。』
しかし、カリフも俺も分かっている。自害した時点で真っ黒だが、大した成果も出ないだろうということを。
『周りのものにラジットの死はどう伝える?』
『昨日までは元気でしたので、今いる者たちには、事実は伝えず国に帰った事にしたほうがいいでしょう。』
運転しているシェザードを眺めながら、ふと気がつく。
『シェザードは、人が目の前で死んだのは初めてか。』
突然話しかけられ、驚いたようだが、ハンドルだけは離すまいと慌てながらも『はい、初めてです。』と応えてきた。
『2、3日休暇を取れ。昨日も今日もイレギュラーな事が続いた。リフレッシュしたらまた働いて貰う。』
シェザードはミラー越しにカリフを眺めると、カリフはゆっくり首を縦に振ると嬉しそうに礼を言った。そうこうしているうちに家に着いた。
シェザードは早めにあがらせ、カリフとはまた、二人だけで話さねばならぬ事がある。
『身元に不審な点はありませんでした。本国採用で、家族は妻が一人』
『妻‥ファラと言ったな。』
『はい、その通りですが、何か気になる事でも?』
『前にラジットと数回話した事があった。今日は、お前の妻の誕生日だったなと、その月の誕生石の入ったバングルを持たせたのだ。すると妻は本国にいて実はもうすぐ娘が産まれると。名前も考えてくれと言われてフィッダと名付けた。えらく感激してプレゼントを受取り、名前はそうすると喜んでいたし。その後娘が無事に産まれたというので、祝いの品を買って本国に届けておいた。だがまぁ、裏切られたわけだ。』
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
18 / 685