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「ほぉ、シオンは料理上手だな。」
そんなに賞賛されるような食事内容ではない。
よくある朝食バイキングで、だいたい皆が取るであろうものをイメージして、並べてみた。
殆どは冷蔵庫にあったお惣菜ばかりだ。
手を加えたのは、ちょっとしたサラダ、ヨーグルト、パンを少しトースターで温めて。
ジュースはジューサーバーがあったので、りんごや人参、梨といった果物を、皮を剥いて一口大に切ると、ガガガーと混ぜたものを、少し舐め、ジュースぽかったので出した。適当だ。
卵とバターと牛乳があったから、それらもカシャカシャ混ぜて、火にかけると味はまぁまぁ、形はお店よりは崩れたオムレツが出来た。ついでにウィンナーも、意味なくタコさんぽく切ってみたり。
本当は、俺は朝も夜も和食メインの食卓なんだけど、ハミドのイメージはこっちだろうと思って。
ハミドが、タコさんウィンナーを持つのはやっぱり不釣り合いなのだけど、「シオンのこうした遊び心は、俺の癒やしだ。」
そう言って食べ、頷きながら微笑んでくれた。そんなに好みを外していないことには手応えを感じ、安心した。
舌がめちゃくちゃ肥えてそうだから、躊躇いもあったけど。
少しだけでも俺の手作りがハミドの口を喜ばせた事が嬉しい。
朝食を済ませ、コーヒーを飲みながらハミドは時間を見た。
「露天風呂で日の出を見るにはもう間に合わなかったな。明日はカリフに起こして貰うか。」
「えっ‥ここから、日の出が見られるの‥‥?」
「あぁ、太陽の位置からして、正面の山から出てくるはずだ。ん?学校では最初の方で習わなかったか」
「俺、あまり覚えてない。ハミドは今の学校に来る前は、自分の国の学校?」
「いや、アメリカの大学を飛び級して、日本の経済や文化を学びたくてまた入り直した。と言っても国際コースだから、クラスメイトで日本人は2割にも満たないが。」
「アメリカの、大学を飛び級!?」
「海外では珍しくもなんともないぞ。10歳未満で入ってくるのもザラにいるし。」
「そ、そう‥そういうもんなのか‥。」俺にとってはどちらでも凄いと思うけれど。
「今の授業は、何をやっている?」ハミドが俺にも話を振ってくれるが‥
「今は、英語でいうと単元はわりと大丈夫だけど、長文読解とリスニングが‥ね‥」
「リスニングか、コミュニケーションを増やす機会があれば、いくらでも聞き取れるようになる。
長文読解は短文から慣れていけば、さほど難しくない。シオンはとても記憶力がよく、賢いのだから大丈夫だ。」
頭をポンポンと撫でられた。
ハミドはきっと勉強で苦労したこと無さそうなのがよく、分かった。
もし応用数学が難しいと言えば「足し算引き算がきちんと出来れば、応用数学なんてその延長だ」みたいなアドバイスをしてくるに決まってる。
この手の奴は「何故これで理解出来ないのか、分からない」パターンだ。
この完璧人間の苦手な事を、一つ位見つけたいな。
運動音痴なハミドとか、想像つかないけど‥
同じ人間だ、一つ位はあるだろうと変な好奇心を抱いた。
ハミドは俺がそんな事を考えているとも知らずに、
「兄上の別荘にくるのは俺も、初めてだ。シオン、この中を一緒に廻ってみて、時間でも潰せそうなものを探しに行かないか?」と、提案してくれた。
結構広くて、腹ごなしの散歩になりそうだと、俺は賛成して急いで後片付けをした。
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