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うぇ、ゾッとする程甘い。
「シオンは、甘いものが好きなのか。ほら。」
フォークに刺さったパウンドケーキを、艶っぽく流し目をくれながら、俺に寄越す。
「いや、いいよ。自分のを食べるから‥」
俯いて、自分の分を食べながら、コーヒーをブラックで飲む。
いつもなら砂糖を入れるのだけど、さっきからハミドのベタベタな甘さに胸焼けを起こしそうで、糖分を、控えた。
「俺は、こうしたものはあまり食べない。シオンが好きなら、俺の分もやろう。さぁ‥」
フォークの先をゆらゆらとさせながら、進める。
うげぇ、甘すぎて砂でも吐きそうだ。
ハミドの距離感についていけずに、耐え難き羞恥に俯いて、コーヒーを飲む。
絶対に、受け取らないという態度を悟ったのか、結局自分の口に運び、大人しく食べだした。
ご飯は、ここに沢山ストックされているお惣菜があり、用意に困らなかったし、このパウンドケーキも、冷蔵庫とは別に、ホールから切り分けられてカフェでみるようなケーキ用ショーケースの中に入っていた、紅茶の葉が入った、上品な甘さのパウンドケーキだった。隣は、チョコレートを練りこんだような、ココアのパウンドケーキが入っていたけど、二人ともこちらを選んで食べている。
お兄さんは、医療機関の研究所?に勤めているとかで、アメリカで暮らしているらしい。
ハミドが俺に炎症を起こさないよう塗ってくれた薬なんかも全部そこのだと言っていた。
湿布は昨日凄く効いたので、恥ずかしかったけど腰に貼らしてもらい、お風呂上がったり寝る前にも使ってみようかと思う。
マッサージ効果か、なんなのか、貼った時はひんやり冷たかったけど、少し経つとじんわり温まり、また冷たくなって終わりという初めて体験する不思議な湿布だった。
「兄上はスペシャルと書いていた。」
ハミドの家系って、皆ドヤってる感じなのか。
アメリカの研究所で働くって実際凄いんだろうけど、俺とは住む世界が違いそうだ。
ハミドとも、なんでこんな事になっているのか。
ここまで、なんで俺がそんなに気にいられているのかも、イマイチ解らない。
「シオンは、俺の宝だ。」
とか、真面目な顔で言うし。
「俺の生涯でシオンより心の綺麗なものなど、見つからない。」
俺もハミドも年はまだ、人生の折り返し地点にも来てねーよ‥。
「アバタも油田に見える時期かもね‥」
俺がふっと力なく笑うと
「それは間違えて覚えている。アバタも、エクボだろう?」
「うん、ハミドはその次元を遥かに超えて、油田レベルの補正が目にでもかかっているんだよ。」と、溜息をつく。
そうこうしているうちに、この別荘の玄関が、物々しい音を立て、凄い勢いで開いた。
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