アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
48
-
side ハミド
スペイン語で話しかけられるとは思わなかった。
(《》内スペイン語です。『』が母国語です。)
《お初にお目にかかります。この度の護衛試験番号13番です。》
《護衛‥13番?》
《はい、あの‥。側近のカリフ様より身辺警護強化にあたり、今年16歳になり、日本で生活できる男子のみという条件で護衛を数名探していると‥。私は13番というナンバーを頂き、この採用試験にエントリーし演習に参加したのですが。確か、クリアするための条件は、この屋敷の正面の暗号を解くこと、お名前を決して言わないこと、日本語、英語、我が国の言語以外で、あなた様に話し掛けることで晴れてミッション完了だと聞いたのですが‥》
ただの演習としか聞いてないぞ!カリフ。
しかし16歳、男子のみでピンときた。シオンの学園での護衛だろう。すぐに察したが、今までになく仕事が早い。奴なりに腑抜けた俺を心配し、始めた今回の拉致監禁。
演習も元々このつもりで‥。
だが、この状況をシオンにどう説明しろと言うんだ!
13番には、こちらではこれ以上する事もないので、本部で指示を仰ぐよういい、任務完了だと告げて帰らせた。シオンと今接触を持たせるのは、とりあえず避けさせた。
ワンコールで電話に出たカリフは珍しく興奮気味に資料を持ってきますとドタドタ走る音がした。
『13番!予想よりかなりの高タイムをマークしましたね。資料に書いてある通り、趣味はパルクールで鬼ごっこなら一日遊べますとか、ユーモアも持ち合わせているとは思いましたが、案外本当に出来るのかも知れません。ルール上は、彼で終了ですが、気に入らないようでしたら、次点、3番手まで候補者を絞り、殿下がテストなさいますか?』
と、こちらの心配をよそにペラペラ話している。
『パルクール?あぁ、外国人が間違えて認識する忍者のような動きをする、アレか。』
『ふふっ、ありましたねぇ。ニッコーで受けた接待で、ハミド殿下が、お前は忍びのモノなのに、何故フラフラと出歩いているのだ!と、大層ご立腹なさり、クライアントが泡食ってる中、離席なさいましたが、本当に‥あなたは‥あの頃から‥』
ハァー等と大袈裟に溜息を、ついている。
『うるさい、あれはワザとだ。よく知らない外国人に、高い物を売りつけようという向こうの腹の内は読めていたからな。しかも品はいいのに持ち主がタチの悪い案件だった。』
そうだ、あの時は日本の伝統的な価値ある逸品を、あのハゲオヤジから救ってやったという表現のほうが正しい。
おかけで市場には出回らないような破格の値段で、戦国武将縁の茶器を手に入れた。
日本の戦国時代、城5つ分と交換して欲しいと頼んだが断られ、生涯あの茶碗を焦がれた武士が、ついに死を迎える直前、ようやく手に入れたという逸話がある、茶碗の名品だ。
一見ただの茶碗に見えるが、抹茶を入れた時の景色ときたら‥時間が許せば寺を貸し切り、紅葉の庭で、一服を楽しみ、ただただ、静寂を過ごすのはさぞ極上の時間だろう。
あれがうっかり国宝や重要文化財にでもなってみろ。
ガラスの向こう側で、誰にも触れられる事もなく、見られるためだけに飾られるなど‥。
『バブルだかの時に大枚叩いて買ったらしいが、アイツはただ一度も、いいかっ、ただの一度も茶を飲まず、箱から出してたまに眺めただけだと言っていた。あのハゲの正気を疑ったぞ!
あんな、ものの価値も分からんハゲのもとにいるのと、俺に持たれ、日本古来からある、家元のシローや茶道の愛好家の仲間達が礼儀を弁え、借りにきて、大切に道具として文化的に愛でられる。どちらがあの茶器の為だとお前は言うのだ。』
大きな溜息を一つ吐くと『ご高説、ごもっともでございますが、ハミド殿下のその情熱だけは、側近一同理解の及ばないものでございます‥』
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
48 / 685