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side ハミド
藍染の浴衣、洗いに出すのはいいとして、どうやって保管しようか。来年着てくれるかと聞いたら、顔を赤らめ、頷いてくれた。来年も俺と共に居てくれるという返事でいいのだろうか。
『さて、いかがでした?ヤエズヤマデパートの会長とのお話は。』
『お前本当に、優秀だな。もし過労死したら、俺の生命保険は受取人の項目に、太字でカリフと書いてあるんじゃないかと思うほどにな。』
『恐れ入ります。』
『褒めていない!』
『知ってます。ふふっ‥。で、ヤエズヤマの新コンセプトである、箱は売上のみを取る、というその概要には賛成ですが、本当に出資なさるのですか?』
『ビジネスだからな。いくらシオンの為と言っても利益にならなければお前は説得出来ない。』
『勿論です。シオン可愛いさで、あなたに腑抜けになられては、私達が仕えている意味が無くなります。』
シオンと最初に会った日、決め兼ねていた洋服のカタログを見て思った事がある。
シオンの好きなものを、知りたい。それを知れば、シオンに与えた時、いつも笑ってくれるだろうかと。
地球のネックレスは、シオンによく似合うと思ってただの衝動買いだったが、喜んでくれなければ次は何がいいだろうと浮かんだのが、洋服だった。
シオンの好きな服の会社を調べたら、洋服学校を出て自力でブランドを立ち上げてから、若者達に元気と夢を与えるのがコンセプトの会社だと資料にはあった。手頃な値段で流行を追えるのも魅力らしい。
今回ヤエズヤマとの共同出資は、都内の一等地に真新しいビルを建て、家賃をなくし、売上の何割かをビルオーナーに収めてもらう形でブランドを募集し、売上のいい店が翌年は良い売り場を確保出来るという少ない資金でも才能があれば一攫千金も夢ではないと、若い起業家を応援するプロジェクトだった。
やはり感性の若いものの服は、若い感性が必要なのだろう。今日の即売会は新ビルのメンズ館に揃えるテナントに入るための、謂わば模擬戦のようなものだ。それを視察してから判断して欲しいと声がかかってはいたが、俺は会長とビジネスの最終合意まで持っていこうにもシオンの事があるからというと、そこはカリフが何とかするという事で任せた。あの値段は、ほぼ材料費で、店頭に並ぶ商品の2割ほどでにすむが、それが定価でも欲しいのか聞いてみたかった。シオンの口ぶりからすると、少しはいいテナントが入りそうだ。
黄色のシールを多く集めた店がまずはあのテナントからスタート出来る。カリフはそれとは別に青のシールを用意しシオンの好みを、さも買い物を楽しんでいるように見せかけてリストに、まとめ上げていた。俺はそこの新作でも出たらシオンに真っ先にプレゼントしようと思っていたのだが‥。
『これだけあれば、向こう十年は洋服買わなくて済むよ!』
ピシッと、心臓が欠けた気がした。
向こう十年?
洋服は、買わない‥‥だと!
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