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side ハミド
「お前でも、疲れる事があるのだな?」
カリフの調子があまり良くない。
「はぁ、何を仰有るのです?」
うむ、自覚症状無しか。
すごぶる悪いのだな‥
お前に最近無理をさせすぎたのは分かっている。
かなり無理をさせ、急ピッチで作らせた、空の茶室、ベッドルーム。
欲しかったのはそれだけだ。
あっ、風呂場の他は、シャワールームも。これは欲しい。
それから食事はしたいが部屋に入られたくはないし…
…‥‥‥。
色欲に続き物欲もかと、ゲンショーにやんわり窘められそうだ。
まぁ一番は、シオンと何の気兼ねも無く会える部屋が欲しかった。
側近を疑いたくはないが、なにせここは働く人間が多すぎる。
細心の、注意を払って人選させた。
カリフの側近、シェザードという男でもいたら、お前も、もう少し楽が出来たかも知れないが、運転手の死の一件以来、カリフはシェザードの心の癒しにあたって、失敗したと言っていた。
そんな弱そうな男には、全く見えなかったが。
とにかく、他の部署に彼を配置替えしますとのことで、例のデパート関係の担当窓口ポストにつかせた、と報告を受けた。
実は最近、その亡くなった運転手の妻側の情報が入った。
ラーラが手土産に寄越した、アンダーグラウンドの
情報。
てっきり我が国にいると思ったら、妻側の故郷、ヨーロッパ近辺の小さな国に帰っているとの事だった。つまり、妻はもう我が国の国民でなくなった。
俺が救えなかった、運転手。彼女はそれで嫌になって出国してしまったのだろうか。
そして、彼女の娘フィッダ。出国にはフィッダらしき履歴は無く、妻のみの名前しかなかった。
ただ、嘘をついただけかも知れない‥と片付けるにはどうにも引っ掛かる。
ふと、カリフに一本の電話が入った。
何やら楽しそうに話している。
「ハミド殿下、シェザードから電話があり、無事シオンの隣に引っ越したそうです。これで家周りも少しは安心でしょう。そうそう、素敵なご報告がありますよっ♪何と、シェザードが数枚ですが、シオンの洋服のストックを減らしてくれたそうです。アパレル関係に勤めると言ったら、先日のストックを譲ってくれたそうです。二年程、短くなったのではありませんか?シオンと仲良く出来ているようで、ふふっ微笑ましいですね。」
嬉しそうに話しているが、カリフよ。
お前、自分に矛盾を感じないか?
なぜ、心の癒しに失敗した男をシオンの護衛と称して、この側近部屋から追い出した。
なぜ、シオンの服が数枚減った位でそんなに喜んでいる。
こんな報告、お前が誇らしげに言う程の案件か?
なぜ、電話が来ただけで、そんなにも嬉しそうな顔をしているのだ…。
そして最後に、俺に勘付かれたことにも、全く気がつかない。
そら、お前は、俺を見ていないぞ。
今度はお前とシェザードを、俺の、別荘に放り込んで、媚薬でも塗ればいいのかも知れんが、それでは捻りも何もない、面白くない…。
シェザードを見る限り、カリフをとても慕っていた。
なぁ、カリフ。
俺とシオンとの時、お前はこんな気持ちだったのか。
拒んでいるのは、好いているのに素直になれないのは、お前の方か。
「カリフ、俺はそろそろ空の茶室に戻る。さっき、電話があった。シオンが来てくれると。シェザードが家にいても仕方あるまい。お前、飲みにでも連れてってやれ。」
カリフが驚いたような顔をしている。
今は俺の胸の内に収めておいてやるが、これ以上腑抜けてみろ、俺は、お前に何かするやも知れんぞ…
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