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side ハミド
「本当ーーにっ!ぶっ飛ばせるものなら、ぶっ飛ばしたいです。あなたを。」
カリフの激昂はトレーニングセールが終わっても、留まる事を知らなかった。
「なんですか!本国の両親に『お前達の息子がこっちで俺の部下と宜しくやっているようだ。新婚は生活にも困っているようだから三億位、送金してやれ』って、犯罪ですよ、犯罪。私の親にまで、金をタカるのはやめていただきたいです。それから、これは貸付たもので、あとでたっぷり返済の目処はつけてもらいますからね。」
「カリフ、お前も名のある家柄だろう?シェザードの事は色々と話しておかなくてはいけないのではないか。」
「大きなお世話ですー!大人には大人の事情があるんですよ。あなただって、シオンとの事をまだ伏せているではありませんか。将来の相手を紹介するのは、タイミングを伺う程、デリケートな問題なのではないですか?」
「うっ‥確かに。軽率な真似だったな。」
「まぁ、仕方がありませんね。うちは弟もいますし、跡取り問題はハミド殿下に仕えると決めてから外して貰いました。両親には迷惑を掛けると言いましたが、殿下の側にいる俺を許してくれた位ですから、折を見てシェザードを会わせてきますよ。私達の留守中、くれぐれも面倒ごとを起こさないように!い、い、で、す、ね、?」
「解った。苦労を掛ける。」
「いいえ〜。苦労はいつもの事です。」
少しは落ち着いてきたようだ。
テルは、そんな俺達のやり取りを信じられないものを見るように言った。
「ハミド、2億なんて、大金‥‥」
「俺の名の馬だぞ!20億でも出したい位だったが、まだ成人していない為、カリフにかわりに買って貰った。テル、お前何をそんなに世捨て人みたいな事を考えている?お前が頑張って、この業界を世界的レベルにまで押し上げたんだろう。戦いはむしろここからなのに、お前はやり遂げたとでも言うのか。
腑抜けに俺の馬は預けられんからな、さっさと目を覚まして馬と共に走れ。
アメリカにエプソムと同じコースの馬場を作らせた。
テルの第二牧場として、馬たちを鍛えるために俺が作ったのに、無駄になってはいかんからな。」
「第二牧場だと!?」
「父上が初めて取った、大レースの優勝、あの時現地に居られなかっただろう。テルに、夢だった海外のレースで優勝するときは一緒にいようと約束したのに。せめて何か償えないかと、あのあと土地を探して、工事をさせた。ホースマンの夢はエプソムの大レースだろう?テルならきっと役立ててくれると思っていたんだ。」
「テル様、こちらはハミド殿下のポケットマネーからですから、私は全然構いません。どうぞ、このプレゼントを、お受け取りくださいますか。」カリフはニッコリ笑う。
テルは目に涙を溜めて、俺とカリフに礼を言い、ハミド号は必ず後世に名を残す名馬にすると誓ってくれた。
俺は馬には何があるか分からない、だから無理はするなといいテルが挫けそうになったらいつでも電話するように言った。今回の事で、世界の中で孤独に戦うことはテルに大きなストレスになっていることがわかり、こうしたものはチーム戦だと告げた。ヴイロトリア女王だけでなく、色々な世界の人間と戦って行かなくてはならないのだから、困った時はいつでも頼れ。
そう言って、テルと改めて世界に挑戦を誓い、北海道をあとにした。
東京に戻りシオンに連絡すると、俺も会いたかったと空の茶室のマンションに来てくれた。
北海道の、あの馬は元気かなんて聞くので、寒くなる前にまた会いに行くか?と尋ねると嬉しそうに頷いた。シオンとの素敵な思い出の場所は、一つでも多く作りたいし、残したい。その為に俺は、何だってする。
ご褒美は、この甘いキスがいい。
俺をとことんまで甘やかしてくれる存在は、シオンだけだから。
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