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その夜。
夕飯を食べながら 千春が珍しく ため息をついて 愚痴をこぼした。
「ねぇ、真弓さん。午前中見たでしょ?
あの子。もう 疲れちまう。
全然仕事しないんすよ。荷物も運ばない。頭は下げない。
ルートを説明しても上の空。
今日ね、せっかく2人居るんだから いつもよりお客さんの近くで駐車したんすよ。駐車違反にならないようにあの子を車に残して。荷物を運ばせないでね。
俺 団地の階段登って 何軒か配達して 戻ってきたら 車に居ないんすよ。俺 危うく 駐車違反の切符切られるとこ。
そしたら 喉渇いたから自販機でコーヒー缶買ってきたって。
別に俺は飲みたくないっすけど。思わず ムスッてしてたら あれっ山手さんも飲みたかったんですか?だって。言ってくれれば 買ってきたのに って。
俺久々に ムカつきました。
あの子20才ですって。運転免許取ったばっかりで。まだ車を運転したこと無いんですって。
営業車運転させようとしたら こわーい。やだー。って。
何の為に 入社したんだよって話っすよね。
俺達の仕事は お客さんの荷物を配達したり お客さんからの荷物を預かって 送ることだって説明したんすけど。
えー遠くまで届けるのも仕事なんですか?
だって。どうやって遠くまで行くんですか?だって。
だから 夕方 俺達の会社の関連のデカイ車が 各営業所を回って 送付する荷物を集めていくんだよ。一旦 ひとつの処に集めて それぞれ 地域ごとに 選別して 色々な地域に運ばれていくんだよ。って説明したら よくわかんないー。って 返されて。
頭おかしくなりそうでした。」
「可哀想な千春。話にならないね。僕だって そのくらいは 分かるよ。」
「でも あの子 真弓さんと戸塚さんと。
ずいぶんと仲良くして ま し た よねぇ? なんか メモみたいな もん 渡してませんでした?俺 見間違えたかな?
ねぇ 真弓さん?
真弓さんが 答えないなら 戸塚さんに 直接聞いてみよーっかな。ねぇ?真弓さん?」
「ふふふ。千春ヤキモチやいてくれてるの。戸塚も僕も そのメモ 即ゴミ箱行きだよ。」
「やっぱり。ケー番メモに書いて沢山持ってるんすよ。俺にも 連絡くれるなら、ケー番渡しておきましょうか?って。用があるときは、会社通して連絡いくから、いい。ってこと。断りました。
あんな 女の子。山ほど持っていて、駅前のテッシュ配りじゃないっつうの。」
「パンフ見て 入社してきたの?よく面接に受かったね。」
「でしょ? 俺も信じられないっすよ。
おまけにね。営業所に帰ってから 所長にね、明日も俺と組むって 直談判してました。今日 俺と組んで 明日は別の奴と乗る筈だったんすよ。
所長も OKしちゃって。あの子が帰ったあと もう2、3日我慢してくれって、頼まれてちゃって。
あの子が 俺と組みたい本当の理由は 真弓さんのせいじゃないっすか?真弓さんと会えるからじゃないんすか?」
「残念ながら 違うよ。
戸塚に写真を撮って貰いたいらしいよ。」
「バッカじゃねーの?世界的なカメラマンが あんなの 撮る訳がないっつうの。アホだ。しかも 戸塚さんて ドキュメンタリーとか 報道とか。人物だって 戦場のとか 素朴な人達とか。あとは スゲー有名人とか。素人の人間なんて撮らないっしょ。撮るとしても、よっぽど 魅力的な人で 戸塚さんの メガネに敵った人とかでしょ?」
そのメガネに敵ったのは 千春だったりするんだけどさ。
あの子が聞いたら 悔しがるだろうな。
そんな憤懣やる方無い 千春は 珍しく不機嫌全開の 様子で。プンプンって形容詞が似合うほどだった。
それも なんか珍しくて 可愛くて
真弓は 新たな千春の一面に
顔をほころばせたのだった。
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