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1 プロローグ
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梓の葬儀が済んだ。
梓は 僕 山手真弓の双子の兄弟。
生後数ヶ月で 不幸な事故で 一時心肺停止になり 仮死状態から植物人間になり、やがて脳死状態に。多臓器不全で亡くなった。
よく 保ったと思う。
赤ん坊から今まで 言葉を覚えることもなく 喜怒哀楽の感情も覚えることもなく 逝ってしまった。
葬儀は姉が入院中だったこともあって 簡素な家族葬にした。僕の両親と千春だけ。
僕と父は医学的見地から 回復は難しいことは解っていたし、臓器の提供も ほぼ機能しなかった臓器だと分かっていたので 臓器提供も申し出ることもなかった。
その他使える物が有ったとしても 母はせめて あちらでは五体満足で五感を使って自由に楽しめるように。との意見を曲げなかった。
家族葬といっても 自宅に遺体は安置しなかったから葬祭場の一番小さなホールで喪服になることもなく 僧侶を呼んで4人だけで焼香した。
イマドキは棺も厚い紙で金ぴかの布地が貼ってあるが一応アクリルのような透明覗き窓は付いていた。湯灌代わりに散髪が施され 桜貝のような薄い爪も切り整えられ 死に化粧は必要ないほど 透き通るような肌の白さだった。
何か初めて梓の顔をしっかり見たような気がする。いつも鼻にも口にも 喉辺りにも 様々な管があって 無粋な肌色テープが 顔のあちこちに固定されていたから。
骨だけが浮く関節 硬直していた手と指。食べ物を咀嚼したことが無く 未使用だから細い 細いあご。性徴期が無かったのか 喉仏は小さく 排尿だけの用途にしか使われなかった陰茎と色の薄い疎らな陰毛。
棺に入れられた梓は いつもと同じく 目は 固く瞑ったまま。
棺の中 花に埋もれてその細い身が隠れていく。
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