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病院で梓さんの手には 時々スポンジが握らされてたりした。
無意識に手を 握り締めたりすることがあるからだそうだ。
梓さんの爪は薄くて 強い力が入ると 手のひらに傷が付いたり 爪が傷んだりする。だから手のひらに スポンジが握らされている。
ゆっくり開くと 手のひらに 白いわたぼこりがある。ほこりが手の中に出来るほど その手は 水道でじゃばじゃば 洗われたりしない。そして そのわたぼこりが黒ずむほど、開かれないし、そのからだも 新陳代謝も盛んではない。汗も殆どかかないし。指紋も掌紋も 有るのかというくらい薄い皮膚で、赤みもない。真っ白な皮膚で、真っ白な手のひらだ。
手が使われたりしない。物も掴まない。食器もお箸も持たない。痒くて掻いたりもしない。何かを触ったりもしない。だから 梓さんの手に俺の手を重ねる。手のひらが薄い。足の裏に土踏まずもないし かかとも柔らかい。
その足で 地面を踏みしめたことがない。
お尻で椅子に座ったり 座布団にも座ったことがない。柔らかな草の上や 冷たい駅のベンチ 雪の上 コンクリートの塀や風呂の椅子も知らない。
熱い火傷しそうな 味噌汁 冷たいかき氷 ふわふわのパン かちかちの堅焼き煎餅 柔らかな生クリーム 粗い衣のトンカツ 甘い飴 苦い山菜 しょっぱい梅干 酸っぱいレモン 色んな味の食べ物。
匂いも 冷暖も 教えてあげたかったなぁ。
俺のが 知ってることいっぱいあるから。
仕方ないのかな。人間は皆 死ぬ 生き物だからな。
せっかく 真弓さんと お母さんのお腹ん中で ずーっと一緒に 育ったのによ。
梓さんの兄弟の 真弓さんは すげー優しいんだよ。梓さんが居たら すげー仲良し兄弟になっていたかもな。
俺にも 一番に紹介されたかな。
俺とも 仲良く出来たかな。
あ 安心してくれ 梓さんには 惚れないよ。
俺 真弓さん ひとすじ だから。
俺 梓さんのこと忘れないよ。
梓さんの分まで 真弓さんと過ごして 幸せになるからよ。
空の上で 俺の親父と婆ちゃんから 俺のこと 聞いてくれよ。俺のこと 見守ってくれよ。
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