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空虚な日々、淡々と
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「じゃあ、明日から冬休みだけど夜更かしせず、宿題もしっかり計画的にやるんだぞ!」
「あっ、せんせー!冬休みの宿題の天体観察ってやっぱり星見ないといけないの?」
「そりゃあ、やっぱり実物の星を眺めてほしいけど…この辺はなかなか綺麗に星が見えないかもな」
明日から冬休みの子どもたちの瞳はキラキラしている。
「えーそれじゃあ、そんな宿題出さなくてもいいのに…」
教卓の前の席の子がぼそっと呟いた。
「綺麗には見えないかもしれないけど、夜の空を眺めてみろ。何か発見することがあるかもしれないぞ」
「先生、先生、僕毎日星を眺めるよ!お母さんにも頼んでプラネタリウムにも連れて行ってもらうんだ!」
次は一番後ろの席に座ってる子が手を挙げて、興奮気味に言った。
プラネタリウムか。
――今度、プラネタリウムとか観に行こう
冬の海でミケと約束したんだけどな…。
もっと早くその約束を実現してれば……
「…先生?」
何も言わない俺に不思議そうにしている子どもたち。
「あーごめんごめん。いいなプラネタリウム。星の説明もあって結構楽しいからな」
「へぇーそうなんだ。じゃあ行ってみようかな…」
先程、呟いた教卓の前の席の生徒がひとりごとのように呟く。
「おっ、もうこんな時間。先生の話は終わり。冬休み思う存分楽しむんだぞ!」
学級委員長の号令で、立ち上がりさよならと挨拶をし皆一斉に教室を出て行く。
その背中は明日からの長期休みにうきうきと輝いていた。
「おっ、いつも帰りの会が長いって1組の生徒で愚痴を零される卵海先生なのに、今日は早い!」
「て、そんな愚痴こぼしてるんですかあの子達」
「知らなかったのかよ」
廊下の方から声をかけてきたのは隣のクラス、2組の担任を受け持っている藤宮先生。
「まぁ今日ぐらいは早く終わらせてもいいかもな。いつも長いんだから」
「…なんか結構失礼なこと言ってません?」
「失礼って事実だろ」
「まぁ…」
自分でも自覚してる。
できるだけ簡潔に伝えてるんだけど、どうも話が脱線してしまうんだよなー。
「それにしても、天体観測の宿題、卵海先生が考えたんだよな?」
「そうですね…」
「だるい、どうせ星なんて見えないって生徒からは不満の嵐だぞ」
「まぁそうですよね…。でも生徒たちに星空を見てもらいたかったんですよねー」
教卓の整理をし、生徒たちの机を綺麗に並べていると、藤宮先生も手伝い始めた。
「ちょっと、藤宮先生はやらなくていいですよ」
「いいのいいの。卵海先生に話があるから一緒に机並べながら話せばいいんだし。てか、この仕事、日直の仕事だぞ」
藤宮先生は窓辺の方の机から並べている。
「いや、知ってますよ。ただ今日は俺がやるからって日直の子には帰らせてあげました。いつもは日直の子にやらせてます」
「ふーん。だからか話の長い卯海先生が生徒から嫌われていない理由は…」
何かブツブツと呟いてる藤宮先生だが、廊下側の机を並べている俺の耳に届かない。
まぁ、ひとりごとだろうしそんなに掘らなくてもいいか。
「それより話ってなんですか?」
「あぁそうそう。今日飲みに行こうぜ」
「えぇ、まぁいいですけど。それだけですか?」
「それだけだけど?」
どうせ席も隣同士なんだ。そんなの職員室でも誘えるだろう。
「職員室じゃ他の先生達にも聞こえるだろ。そしたら他の先生方も行く行くうるさいからな。特に女性方が」
「あぁー」
藤宮先生、顔整ってるしな。
教師じゃなくても、芸能人でも十分食っていけそうだ。
実際、学生の頃からスカウト何度もされてるって言ってたし。
「やっぱ俺たちイケメンだからな。モテる男は困るよなー」
「それ自分で言います?」
「ほんとのことなんだからいいだろ。でもこの顔のおかげで生徒たちの保護者にも好感を持ってもらっているから得だけどな」
いや顔だけじゃないだろうけど。
俺とそんなに歳変わらない藤宮先生は面倒見いいし生徒からも慕われている。
勉強させてもらうことの方が多い。
「よし、じゃあ飲み行こうなー。いい店見つけたんだよ。料理上手いし、落ち着く店なんだよ」
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