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体育委員、委員会会議
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語り:バスケ部二年 畑中
こんにちは。
二年四組の畑中と申します。
我が七山高校では体育祭が近づいてきています。
あ、因みに七山ってのは裏山の名前です。
どうでもいいですね、はい。
体育委員、正式名称「体育的行事委員」。
って言っても、うちの高校は体育的行事は体育祭しかない訳で…
ここに全力を尽くす訳です。
因みに文化委員というのもありまして、こちらの正式名称は「文化的行事委員」。
あ、どうでもいいですね。
体育祭というものは、まぁどこの学校でもそれなりに盛り上がると思うんです。
うちも去年相当盛り上がって、体育委員が頑張ってんのがカッコよくて、俺も体育祭盛り上げたい!なんて思ったんです。
そんで体育委員になったんだけど…
「競技はだいたいこんな感じで行こうと思います。で、毎年競技一つ一つにタイトル付けてんだけど、一年生はどんな感じか分からないだろうから、俺が幾つか例を考えてきました」
今黒板の前でペラっペラペラペーラと喋ってる三年の橘先輩…
この人が曲者過ぎる…
ただ今委員会会議の真っ只中。
さっきからこの曲者に付いて行くのに必死な訳なんです。
「えー、まずは綱引き。因みに去年の男子綱引きのタイトルは”力を合わせて引きまくれ”。これじゃ普通だろ?」
いやいや…普通でいいじゃないですか…
つーかそれで一年に伝わるじゃないですか…
わざわざ例を考える意味なくないですか…
言えないけどね…
「で、今年は趣向を変えて”引けばいいってもんじゃねぇ!”こんな感じにしたいと思う」
なに言ってんだこの人!
引けばいいんですよ!
綱引きだから!
こんな感じでね!
いちいち心の中でツッコんでしまうんですね!
俺いつもツッコまれる方なんですけどね!
「とにかく楽しい体育祭にしたいんだ!じゃあえっと…一年一組の佐々木君!」
「はいっ?!俺ですか?!」
「そうそう、こんな感じで一年の競技、障害物競走のタイトルを考えてくれ。五秒以内!」
突然のむちゃぶり!
一年一組の佐々木君がかわいそうだ…
「えっ…?えっと…」
「はい時間切れ!因みに俺は”罰ゲーム”。これをタイトルにしたいと思ってる」
そんな競技誰も出たくないでしょ!
なんなのこの人…
一年の競技のタイトルを無茶振りで一年に考えさせて、しまいにゃ罰ゲームて…
「そんで競技自体もだな、普通じゃおもしろくないだろ?例えばパン食い競争、走ってパン咥えて走って…それで楽しいか?!いや楽しくない!」
自問自答!
「そんな訳で今年は、走って炭酸1リットル一気飲みして、パン完食してから走ってゴォォォォォォル!こんな感じでいかがかな?」
いかがかな?って…
テンションが謎だな…
「因みにパンは購買で大人気の焼きそばパンをいつも1個110円のところ、20円で提供してもらえる事になってます。俺頑張って交渉してきました」
おお…マジか…
しっかりしてる所もあるんだ…
「で、今一番悩んでるのが、三年女子の競技を大玉転がしにするか、玉入れにするかってとこなんだけど」
前言撤回だよ!
高三にもなって大玉転がし?!
玉入れ?!
しかも女子にやらせんの?!
去年は確か台風の目でしたよね?!
それでよくないですか?!
「三年三組の塚本さん。どう思う?」
「えっ?えっと…私は強いて言うなら玉入れ…かな…」
「そうか。八組の遠藤さんは?」
「えっ?私も玉入れ…強いて言うなら…」
ですよね!
あくまで強いて言うならですよね!
ゴロゴロゴロゴロしたくないですよね!
気持ちはよく分かりますよ!
「そんな訳で佐々木くん!」
どんな訳で佐々木くん呼んだんですか!
「三年女子による玉入れのタイトルを五秒以内で!」
むちゃぶり再び!
しかも先輩しかも女子の競技!
ハードル上がった!
「えっ?!えっと…えっと…」
頑張れ佐々木くん!
「たっ…たっ…」
頑張れ!頑張れ佐々木くん!
「たまたまたまたまたまったま!!」
おいっ!どうした佐々木くん!
みんなめっちゃ笑い堪えてるよ!
声に出して笑えない辛さを痛感しちゃってるよ!
「あー!いい!いいセンスしてる!」
橘先輩のお気に召した!
「いいセンスしてるけど捻りが足りないなぁ…いいか佐々木」
呼び捨てになったし!
「あくまでも女子が出る競技だ。思春期真っ只中のおなごだぞ?なのにそんな恥ずかしいタイトルでいいのか?こんな感じになるんだぞ?”では続きまして三年生女子による、たまたまたまたまたまったまです。”」
シュール!
そんなシュールな放送イヤだ!
「ふふっ…」
誰だ今笑ったやつ!
やめろ!
つられる!
佐々木くんが一生懸命考えたんだぞ!
なのに笑ったらかわいそうだろ?!
佐々木くんが一生懸命考えたのに、考えたのに、たまたまたまたまたまったま…
やべぇ!
笑いのビックウェーブ再び!
「そんなタイトルでいいのか?否っ!」
否っ!じゃねぇよ!
大玉転がしか玉入れさせようとしてる人が、なに言ってんだよ!
「もっとこう…気品溢れるタイトルにすべきだ。
そんな訳で”試されるのはあなたの知性”。これでどうだろうか」
知性試されるの?!
玉入れで?!
どこに知性を感じればいいの?!
この高さにこの重さの玉を入れるなら、角度はこの程度、球速はこの程度…みたいな?!
美しく玉を投げるには手首のスナップが…的な?!
玉入れに知性求める人とか感じるなんか人いんの?!
つーか知性ってなに?!
そもそもそのタイトルもう思い浮かんでたでしょ?!
なのになんで佐々木くんに言わせたの?!
もう色々訳分かんなくなってきた!
「あーっと、三年の借り物競走の借り物についてなんだけど、俺もうアイデアがジャンジャンバリバリ止まらなくて。でも一応一人一つずつ考えておいてくださいね」
くっだらない予感しかしねぇっす…
「あっ!そうだそうだ!たけのこ体操って知ってるかな?二年四組の畑中くん!」
ひぃっ…!!!
キラーパス来た!
怖い!
試合終了直前のフリースローより緊張する!
落ち着け!
落ち着け俺!
「えっと…たけのこ体操って、幼稚園とかでやったあれですか…?」
「おっ!知ってるか!気が合うな!」
気が合う事にしないでほしいのはなぜでしょう!
「どんな曲だったか覚えてる?」
えっ?曲?
「まぁ…なんとなく…」
「ちょっと歌ってみてくれ!」
拷問!もしくは罰ゲーム!
なんだそれ!
なんで高校生にもなって歌わないといけないの?!
しかも歌詞らしい歌詞じゃなかったような…
「畑中くん?歌って歌って!」
ああもう…
「えっと…ダバダバ ダバダバ パッパ………こんな感じだったかなと…」
「エクセレーン!それそれザッツラーイトゥ!」
トゥって…
トゥってなに…
もう驚かない…
だがしかし恥ずかしい…
もう俺は無になる…
「このたけのこ体操を準備体操にしたい!してもいいだろうか!」
無になれない!
誰かダメって言ってくれ!
三年生の方々!
諦めた顔してないで頑張って反論してくださいよ!
「よし!じゃあたけのこ体操練習するから!みんな立ってください!ミュージックスタート!」
ミュージックあるの?!
じゃあなんで俺に歌わせたの?!
もうなんだよこれ!
そんなこんなでやたらと疲れた会議は終了…
これから部活か…
テンション上がらねぇよ…
「畑中大人しかったね…」
そんな事を言い出したのは、うちのクラスの女子体育委員澤野。
「あの人を前にしたら、どんな強烈な個性も霞むんだね…」
「え…?」
それってどういう意味?
「畑中なんか可愛いもんなんだなって思った…」
「……え?可愛い?」
そっ………そんなっ…!
まさか澤野は俺の事が?!
ダメだダメだダメだ!
確かに澤野ちょっと可愛いけど!
スポーティーで元気って感じが好印象だけど!
俺には心に決めたサキちゃんというハニーが!
っていうかさ
「なんで秋月の事は”秋月くん”って呼ぶのに、俺の事は呼び捨てなの…?」
今唐突に気づいたけど、女子ってみんなそうじゃね…?
「えっ?だって秋月くんは”秋月くん”って感じだし!ちょっとその辺の男子とは違うっていうか!かっこいいのに可愛いっていうか!蒸しパン食べてるとこと、高跳びやってる時のギャップと
か!笑顔なんか母性本能くすぐるし!」
え…?
澤野ってこんな乙女なキャラだったっけ…?
スポーティーでさっぱりしてる印象だったのだが…
「澤野、あそこにいるの誰か分かる?」
教室の窓からグラウンドを指さしてみる。
「え?梅津かな」
「あれは?」
「山田」
「あれは?」
「え?どれ?」
「あそこの野球部の」
「あー宮本…かな?」
「じゃああれは?」
「秋月くん♡」
えっ…?おかしくね…?
語尾にハート付いてなかった…?
「やだっ♡緒方先輩とじゃれてる♡秋月くん可愛いー♡」
えっ…?絶対ハート付いてない…?
「……なんでそんなに秋月がいいの…?」
確かにクソイケメンだし、すげーいい奴だけど…
俺も秋月好きだけど…
「えっ♡飾らないっていうか♡媚びないっていうか♡頭もいいのに気取らないっていうか♡なんかちょっと抜けてたり♡この前日直の時重たい物持ってたら、さり気なく手伝ってくれたり♡顔だけじゃなくて性格だっていいし♡蒸しパンもぐもぐ食べるでしょ?♡あの秋月くんがもぐもぐって♡でもでも付き合うなんて無理♡だってあんな素敵な人が隣にいたら、心臓麻痺で死んじゃうし♡でもでも秋月くんになら、全部あげてもいいかな♡なんて♡って畑中!なに言わすのよ!」
女って怖ぇ!
最後声めっちゃ低くなった!
俺言わせてねぇし!
勝手に話しただけだし!
「やっぱ俺のハニーはサキちゃんだけだ…」
サキちゃんはきっと”秋月くん♡秋月くん♡”なんて言わないはずだ…
清楚な感じだし…
「んっ?サキちゃんてもしかして五組の福山サキの事か?」
「橘先輩!知ってるんですか?!」
つーか地獄耳!
「知ってるってか家がお向かいさんだからな。幼馴染みだ」
「マジすか?!」
美女と珍獣!
「はっはぁーん…気持ちは分かるぞ畑中…サキは可愛いからなぁ…」
呼び捨てかよ!
「小さい時から可愛らしい少女だった…畑中…サキの連絡先…知りたくはないか…」
「えっ?!知ってるんですか?!」
「幼馴染みだからな…番号からアドレス、住所まで全部知ってる…」
なんてこった…
「サキのアドレス…教えてやらん事もないぞ…」
「えっ?!ホントですか?!」
珍獣とか思ってサーセン!
「でもでもそんな簡単には教えらんねぇなぁ…どこぞのロバの骨に、大切な幼馴染みは任せられんからなぁ…そうだなぁ…」
ロバじゃなくて牛ですよね?!
あれ?馬だっけ?
いや牛だな!
まぁいっか!
なにを言い出す?!
どんな条件を出してくる?!
「体育祭にちなんで、二年男子の見せ場の棒倒し。これでお前のクラスが優勝したら教えてやろう」
「マジすか?!」
うちのクラス運動部多いぞ!
運動神経いいやつ多いぞ!
なんてったって秋月もいる!
これはいける!
「あとはそうだなぁ…」
なんでもやります!
どんな条件も達成してみせます!
「いや、やっぱそれだけでいいや」
「マジすか?!」
なんてこった…
これマジでいけるんじゃねぇの…?
アドレスゲットしたらなんて連絡すればいいんだ…?
「まぁ幼馴染みという数多の因果で、サキがお前のクラスの秋月充にぞっこんなのも知ってる訳でだな」
はじめまして。四組の畑中です。
いやいや、堅苦しいかな…
「間近で見た事はないが、秋月充ってのは大層な美少女だと聞く」
へいサキちゃーん!畑中だよー!
いやいや、それじゃバカ過ぎんだろ…
「サキは秋月充が好きなんだ。普段の大人しさはどこへやら。興奮しながら秋月くん♡秋月くん♡って言ってる」
そもそも福山さんって呼ぶべきかな…
でも他人行儀かな…
いや他人だけどな…
これから他人じゃなくなる予定だけども…
「まぁお前がどんなにアプローチしたところでムリだろうな。なんてったって秋月充だからな」
そうそう…
なんてったってうちのクラスには秋月がいるんですよ…
あいつにひとっ飛びしてもらえば、優勝も夢じゃないのでは…?
あいつなら5mくらい飛べそうだもんな…
いける…
これはいけるぞ…
「畑中ー?聞いてるかー?」
「はいっ!聞いてます!」
「まぁそんな訳で頑張ってくれたまえよ!」
「はいっ!頑張ります!」
「じゃあまた三日後の会議で会おうではないか!」
「はいっ!ありがとうございます!」
見ているだけだったサキちゃんに近づけるチャーンス!
まさかこんな夢のような展開になるとは…
「ねぇ畑中…」
「なんだ澤野!」
「ちゃんと橘先輩の話聞いてたの…?」
「おう!聞いてたぞ!」
棒倒しで優勝すれば、サキちゃんのアドレスをゲット出来る!
「あーあ…サキも狙ってるのか…やっぱ私じゃ敵わないだろうな…」
「ん?なんてった?」
「ううん!なんでもない!私なんかが彼女になんかなれる訳ないし!」
「ん?よく分かんねぇけど体育祭頑張ろうな!」
「……やっぱ畑中っておバカな部類だよね…」
「なんでだよ!」
おバカだっていいもんね!
サキちゃんのアドレスゲットしたら、ちょっとずつ距離を縮めて、年内…いや、クリスマスには、もしかしたらもしかしたら、デート出来ちゃったりするんじゃないの?!
よし…タイミング見計らって秋月にひとっ飛び作戦の話を持ち込まねば…
とにかく体育祭、頑張りますよ…
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