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未完成な復讐
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「ただいま」
鈴瀬さんの家から、俺の家までは程遠くないとこにある。
といっても電車で30分だから微妙なとこで。
大抵鈴瀬さんと会う時は、鈴瀬さんの家か、俺の家
でも鈴瀬さん的には寝室にある、あの大きな鏡の前でぐちゃぐちゃに犯したいっていう妙な性癖があるから、最近では鈴瀬さんの家で会うことが多い。
「豆五郎〜〜?」
「ニャァ」
「お、きたきた。ただいま〜豆五郎ー。」
俺の唯一の癒しである飼い猫、豆五郎。
いつも俺のお出迎えをして、足に擦り寄ってくる豆五郎だが、抱っこしようとすると嫌がるから、頭を撫でて終わる。
「豆五郎、お腹すいた?」
キャットフードの袋を豆五郎に見せびらかすようにして、かさかさと音を立てると、ニャアー、と鳴きながら俺の足に捕まり立ちする。
「よしよし。今あげるからなー」
「豆」と書かれたお皿に、キャットフードを置いてやると、忠犬のようにお座りして待つ。
いい子いい子と頭を撫でて、俺が、よしって言えば、キャットフードにかぶりつく。
本当に豆五郎は俺の最大の癒しだ。
ただこうやって餌を食べてる所だけでも可愛くて仕方ない。
そして、唯一豆五郎だけに本音を話すことができるから。
「豆五郎。俺、いつまでこんな生活続ける気なんやろうか。
今はまだ未成年で、高校生だからバイトとかでやっていけてるけどあと3年もすれば社会人で、こんな生活じゃ生きていけなくなるのに」
バイトして、学校行って、バイトして、鈴瀬さんと会って、抱かれて、溺れて。
もうこの2年それの繰り返しだ。
俺は、今の高校生が送っている「青春」ってやつを有効に扱えない。
青春なんてどうでもいいし、団体で行動するのは苦手で、どこに行ってもこの髪と眼のせいで噂だらけ。
噂は広がって面白半分で俺に近づいてくる女も、男も、面倒くさい。
だから青春の高校生をやめてやった。
「…鈴瀬さんはそれでも俺を見捨てなかった、俺を俺として見てくれた。
だから、身体を預けてるんだ、俺、」
高校に入学した時、鈴瀬さんは「おめでとう」と言った。
そして自主退学した時、「おつかれさま」と言った。
たったそれだけ。
周りの評価を気にする大人と違って、鈴瀬さんはそれ以上でもそれ以下でもなかった。
「何でだろうな。こんな最低なやつ、さっさと見捨てればいいのに」
一度だけ、鈴瀬さんに言った。
「俺を見捨てて、幸せになればいいのに」と。
でも鈴瀬さんは何も言わず、いつも通りに抱いた。
ただその日はやけに静かで、優しかった。
優しい手で、優しい愛撫で、優しい心で、俺を優しく抱いて…
「…あ、話しすぎたな、豆五郎、俺バイト行ってくるからな。」
豆五郎の小さな頭をひと撫でして、家を出て、バイトに向かう。
灰色の世界にまた、足を運んでいく。
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