アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
未完成な復讐
-
イツキちゃんと、橘……、
「芦屋」に出会った日から2週間が経った。
あれからイツキちゃんは、店にぱったりと来なくなって、芦屋にここに来るなとでも言われたのかと思っていた矢先。
「ご、注文を…繰り返させてもらいます…、」
何故か芦屋がバイト先に来るようになった。
いつも決まって夕方16時頃から、閉店近くまで。
何をする訳でもなく、ただカウンター席に座って、本を読んでいるだけ。
注文を受ける時も極力長くならないように、俺が芦屋のとこにいかないようにしていても、こうも連日のように来られたら俺が行くしかなくなる……
「…っはぁーーーーー。気まずい……」
厨房の中で、ウンウンと項垂れていると明智さんが「はい、これ持って行きな。」と料理を差し出した。
「…げ。これ芦屋が注文したやつのとこ…」
運が悪い。
こう何度も何度も芦屋のところばかりいっていると、いつか文句言われそうで…
つか、俺の事絶対嫌いなのに、なんで店に来るんだよ、ふつー嫌いな奴が働いてる店なんて来たくねーのに…
「…はあ……。」
「ちょっとちょっと高槻くん! そーんな暗い顔してたらせっかくのイケメンが台無しだよ!!」
「痛っ。 ……やっちゃん相変わらずテンション高すぎ、てか背中痛いよ…」
「こんくらいで痛いとか言わなーい。
ほらほら、料理冷めちゃうから!せっかくの明智さん特製料理!」
「…ごめん、やっちゃん行ってくれない? 俺トイレ行ってくる」
「あっ、こら!サボり!」
「トイレだって!」
芦屋のとこに運ぶ予定だった料理を、他のバイト仲間に譲って、また厨房に逃げ込む。
よかった…今日はやっちゃんがいて…。
彼女は俺と同じホールスタッフの八木 めい。
将来漫画家になりたいらしくて、専門学校に行きつつ、このカフェで自作の漫画を描くためにネタ作りを探りながらバイトしているという。
俺より2つしか違わないのに社交的で明るくて、バイトのみんなからも信頼されているお姉さん。
たまにテンション高すぎて、手が出るとこが悪い癖だけど……。
「あらあら高槻くんがサボりなんて珍しいね。」
厨房では、明智さんが次から次へとくる注文された料理をてきぱきと作っていた。
手際良く、俺と話しながらも両手動かしてるんだからすごい。
「いや、サボりたくてサボってるんじゃないんですけどね、ただ俺が行くとマズイことになりかねないから…」
「ふーん?」と相槌を打ちながら明智さんは、料理を淡々と作っていく。
そして、また「高槻くん、」と呼ばれた。
「私は何があったか知らないけど、お客さん選んで接客なんてしちゃいけないよ。 お客さんはお客さんなんだから、事情があったとしても、笑顔で乗り切る!って気持ちくらいでいないと」
明智さんの言うことはごもっともだ。
過去に事情があるとは言え、今は店員と客、迎え入れる方に立っている俺がお客さんを選びながら接客なんて、感じが悪いしな…。
「…ありがとう明智さん、俺、いってくるわ」
「はい、がんばっておいで」
まだ何とも言えない状況つーか、感じだけど。
バイトはバイトで、客は客。
店員は店員、俺は俺は、芦屋は芦屋。
よし、割り切ろう。
集中!!
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 145