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未完成な復讐
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今日は珍しく樹ちゃんと、芦屋の部活も休みで
樹ちゃんがcitrusに来たいということで、2人で来店したという。
樹ちゃん曰く、「低血圧の兄さんを起こすに手間取った」らしく、時間も時間だから今日はここで夕食を食べるそうだ。
「''ご注文お聞きします''」
「''紘お兄さん!
私チョコケーキとクリームソーダとカルボナーラパスタと、野菜ピザお願いします!''」
「''樹ちゃん見かけによらずよく食べるね……''」
「''えへへ〜 私食べる事が大好きなの、それにここのお料理は美味しいって有名だからね、いっぱい食べたかったの!''」
「''…食べるのはいいけどそのぽよぽよお腹どうにかしなよ''」
「''ちょ、っと兄さんッ余計な事言わないでよ!''」
テンションが上がる樹ちゃんとは反対に、落ち着いた雰囲気の芦屋。
俺は2人のやり取りが面白くて、くすくすと自然に笑みが零れる。
兄妹の会話ってのはこういう事なんだな……。
何となく自分の兄弟を思い出して、俺にはこんな仲の良い会話なんて向いてない、とすぐに悟った。
「紘くん。」と、芦屋に呼ばれて、我に返った。
「紘くんのオスメメって何?」
「俺の、オススメ……?」
「うん。何頼んでいいかわかんないから、紘くんのオスメメを食べてみたい」
「あーー。そうだなー。俺のオスメメは、シチューオムライスかな。
うちの厨房スタッフが作るシチューオムライスって俺の母親のと似てるんだよ、味が。」
「…じゃあそれ食べたい。シチューオムライス。お願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
注文を聞いて、お冷を置いて、厨房に駆け込んだ。
ふつーに……話してはくれる。
目も合わせてくれる。
そして、「紘くん」と名前を呼んでくれる。
「ッほんとに……心臓に悪いだろ……」
緊張と、焦りと恐怖と、そしてまた違うドキドキが胸の痛みを引き起こす。
胸に手を当てると、ドックンドックンと走った時よりも速い音がする。
顔も熱い、手も震える、足なんてガクガクしてて、凄く、なんて言ったらいいのかわからないけど、嬉しいって言葉がぴったりだと思う。
とにかく嬉しくて顔のニヤけが止まらない。
ぺちぺちと頬を叩いても、自然と口角が上がって、自分自身が気持ち悪い。
「〜〜っ俺……重症だろ……」
この胸の高鳴りは芦屋にしかない。
芦屋を見ただけで、こんな女の子みたいになっちゃってる俺は、本当に恋する乙女って感じで、変だ。
現実に戻らなきゃ……俺は芦屋を好きになる資格なんてないって、過去の自分を許すことなんて出来ない、あいつだって、今はこんなんでも、忘れてるなんてないんだから、気を引き締めなきゃ…俺と、芦屋はただの幼馴染で、裏切った側と裏切れらた側。
許されることなんかじゃない……
「……明智さーん、注文はいりました」
パチンッ、と頬を強めに叩いて、気合いを入れ直して、またバイトに集中。
俺は店員、芦屋はお客さん。
ただそれだけ……
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