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未完成な復讐
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「'ん〜〜〜っ。おいしっ〜〜〜」
「……本当によく食べるね」
「だってここのお料理おいしすぎるんだもん〜〜っ」
注文したクリームソーダ、カルボナーラパスタ、野菜ピザ、チョコケーキを順番に頬張り、ふにゃふにゃとだらしない表情で「幸せ〜〜」なんて言っちゃって。
両頬には生クリームがついて、漫画でしか見た事ない事になってる……
「樹、生クリームついてる」
「''え?! どこ!どこ!''」
慌てるとすぐに英語に戻ってしまう樹。
あんなに日本語を練習したのに、まだまだ日本語は難しくて英語の方がすっと出てしまうという。
やれやれ……と思い、テーブルに備えてあるナプキンで樹の頬についてある生クリームを拭き取る。
「ほら、取れたよ。」
「ありがとう兄さん!」
「はいはい…」
せっかく拭いてやったのに、またガツガツと食べ始めちゃって、本当にまだまだ子どもだ。
そう思いながら僕も紘くんがオススメしてくれたシチューオムライスを食べ始める。
紘くんは、おばさんのシチューオムライスに似てるって言ってた、僕も何度か食べた事あるけど、確かにおばさんの作るシチューオムライスに似てて、紘くんがオススメというより「紘くんの好きなもの」って感じだった。
「………変わらないなぁ……。」
「え? 何が??」
うっかり口に出ていたみたいで、樹に質問される。
それを「別に何でもない。」と返すと、「ねえ、兄さん」と返された。
「なに?」
「兄さんと……紘お兄さんって、前から気になってたんだけど。
……どういう関係なの?」
「…どうしてそんな事聞くの?」
「別に、気になっただけっていうか、知りたいなぁって。
だって初めて会った時から兄さん、紘くんって呼んでたじゃない。だから知り合いなのかな、って…」
今まで樹が、僕の交友関係なんて聞く事なかったのに。
最近になって紘くんのことをやたら聞き出してくるのを僕は煩わしくおもっていた。
今日だってカフェに来る予定は僕1人だったけれど、急遽樹の部活が休みになったからって勝手について来た。
挙げ句の果てには紘くんに抱き付いて……
「…ただの幼馴染みだよ、僕達は。
僕が7歳の頃まで家が隣同士で、一緒に遊んでたんだ」
「…ッ何それ聞いた事なかった……」
「聞かれなかっただけだよ。それにもう10年も前の話だ。今更言った所で、樹には何も残るものはないでしょ?」
「そう、だけど……でも……」
胸がざわざわする……
顔を赤らめて、仕事をしている紘くんの方をチラチラと見たり、紘くんに抱き付いたり、紘くんの事を聞きたがったり、会いたがったり。
…もしかして、
「……もしかして紘くんの事好きになっちゃったから、僕を通じて色々情報を得ようっていうの?」
「''ッ情報を得るとか、嫌な言い方しないでよっ!''」
静かな店内の中で、机を思い切りバンッ、と叩いて、椅子から立ち上がった。
閉店間近の店の中には客は少ないといえど何人かこちらを振り返り、眉を顰めている。
僕はそんな事も気にせず、僕を睨みつける強い瞳に立ち向かう。
「''好きになった所は、否定しないんだね樹''」
「''ッ兄さんには関係ないでしょ、わたしが誰を好きになって、その人の事をどう知ろうが''」
「''……そうだね僕には関係ない事だ……ごめんね''」
「''…いいよ。わたしこそ怒鳴っちゃってごめん兄さん''」
ううん、違うんだよ樹。
僕が謝っているのはね、お前が紘くんを好きになろうと、どうでもいいんだ。
例えお前でも……紘くんはあげないってことを謝ってるんだよ?
「''…わたし紘お兄さんの事好きなの。だから、紘お兄さんと仲が良い兄さんに聞けば何かわかるかなって、思っただけなの…''」
「''そう…。''」
「''わたしこんな事しないで直接紘お兄さんに聞く事にするよ。恋は自力でなんとかするもんだもん''」
樹は何かに火がついたような感じで、これから紘くんに猛アタックする、なんて僕に言う。
僕はそんな妹を見て、心の底からどうでもいいと思った。
例え大切な家族で、大切な妹でもね?
僕の1番を盗ろうとするやつは、容赦しないからね。
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