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未完成な復讐
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「ありがとうございました。」
閉店30分前。
今のお客さんが帰った事で、今店内にいる客は、芦屋と樹ちゃんの2人。
あれから2人とも自分達の注文した料理を静かに食べていただけ、最初に入ってきたような会話はなかった。
何度も気になって、声を掛けようとしたけれど、俺は他人とだし、それで2人の仲が拗れるのも嫌だし、そっとしておこうと思って、俺は仕事に集中した。
そして、今。
2人とも料理を食べ終えて、芦屋は優雅に珈琲を飲んで、本を読んで、樹ちゃんはただじっと待っているって感じだ。
そろそろ……閉店の片付けしなきゃ……。
カウンター席のテーブルや、椅子を拭き始めようとしたら、ガタッと椅子の引く音が聞こえて、
「帰るよ、樹」
「うん…」
2人は短くそう会話して、「紘くん、お会計お願いしていい?」と言った。
嫌だ、と言える訳もなく、言う訳もなく、俺は会計をする事にした。
「…兄さん、わたし外にいるから、」
と、樹ちゃんは芦屋にそう言って、店を出た。
そして俺と、芦屋だけになって、何だか……なんとも言えない緊張感があって、冷や汗かく……
「合計で2528円です。」
「はい。」
会計を早く終わらせて、「ありがとうございました。」と言った。
すると、「さっきはすいません」と俺に謝った。
「え、あっ、いや俺は全然ッ、けど、樹ちゃんは?」
「大丈夫だよ。今は落ち着きたいんだと思うよ、心配しないで。」
「…そっか、ならいいけど……」
ただの短い会話。
7年ぶりのまともな会話。
見下ろしていた瞳が、今では見上げるようになって。
聞き覚えのない低い声。
俺の知らない甘い匂い。
少しの違う緊張感と、また違う緊張感が、俺を襲う。
「…あ、芦屋……ッ」
「何?」
謝らなければ、あの時の事。
裏切った事、宇宙人なんて言ったこと。
ずっとずっと後悔したこと。
ずっとずっと忘れられなかったこと。
ずっと謝りたかった。
芦屋は、橘は綺麗だよって言いたかった。
……ッ好きだ、ってことも言いたい……
「…ッえ、っと……お、俺ッ」
ごめん
好きだ
宇宙人じゃない
綺麗な髪
後悔した
また、戻りたい
言いたい事が、多すぎる…ッいえない、言いたい、怖い、ダメだ……
頭がグルグルグル回る、言葉が出てこない、わからない、どうしよう……
「紘くん、これ。」
俺の手を取り、掌に何か置いた。
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