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未完成な復讐
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「ここなら、いっかな…」
誰もいない非常用階段に座り込み、ポケットに入っていた携帯を取り出した。
履歴から探すのは鈴瀬辰也という名前。
探すと言っても、俺の着信の履歴で一番多いのは鈴瀬さんだからすぐに見つけられる。
名前をタップして、耳元に携帯を当てる。
トゥルルルル トゥルルルル トゥルルルル
トゥルルルル トゥルルルル トゥルルルル
トゥッ『もしもし?』
もう、これで最後だ……
2年間の思いを、感謝を、伝えよう。
心から感謝している。
あなたに甘え続け、あなたを苦しめた、こんな俺をずっと離さなかった……
その感謝と、気持ちをこれで、最後に。
「……俺からもこれを最後にします。
俺は、あなたに会えた事、話した事、抱かれた事を後悔していない。
この2年ずっとずっとあなたは俺の傍に居てくれた、ずっと離れずにいてくれました。
俺の中で、あなたは確かに俺の支えになってくれました。
ありがとうございました……俺はあなたが好きです
兄のように慕っています。
これからもずっとそれは変わりません、今まで本当にありがとうございました。」
無意識に頭を下げた。
ずっと言いたかった言葉は、『ありがとう』
こんな俺を、見てくれた、可愛がってくれた、そして愛してくれた。
忘れない、あなたの事を……
あなたは俺にとってのヒーローだから。
俺の背中を押し続けて、そして、最後にまた押されて、鈴瀬さん自身が、俺を解放した。
あのまま鈴瀬さんが言わなかったら、関係は続いていたと思う。
鈴瀬さんに抱かれながら、芦屋を思い、ずっと泣いていたと思う。
鈴瀬さんは、その苦しみから俺を解放して、俺が一番傷付かないように離れた。
どこまでも、いつまでも、鈴瀬さんは俺に甘くて、優しくて……
「ありがとう、ございました……鈴瀬さんッ」
あなたは俺に勇気と力強さと、自信をくれた。
あなたの存在はとても大きい。
あなたのおかげで俺はここに居られる、あなたの存在があったから。
『…俺も、ありがとう……ヒロ……お前なら幸せになれる……タチバナくんと。
頑張るんだぞ、恋も、仕事も、勉強も。
お前はまだ若い、だからまだ挑戦も希望も可能性もある、ヒロ、忘れるな。
これが本当に最後だ。
俺はこれを最後に、アメリカに発つ。もっと自分の力を試すために、挑戦しにいく。
俺はアメリカで、お前は日本で。
お互いに挑戦し続けよう。
……さよなら、紘』
「……さよなら……鈴瀬さん……」
ップ……ツーツーツーツ……
耳元では、機械音が鳴り響き、俺はその機械音を聞きながら、「ありがとう、」とまた小さく呟いた。
「さよなら……」
さよなら、鈴瀬辰也さん。
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