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未完成な復讐
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「あ……あっ…の時、俺は、」
「怖かったんでしょ?
僕の髪がみんなと違う白髪で、いじめられてるの見て
自分もいじめられるって思ったから。
この綺麗な紅い髪を隠してまで、普通でいたかったんでしょ、僕を裏切るくらいならどうってことなかったんでしょ?」
「そんな、こと…!!」
「ない、なんて言わせないよ。
だってあの時紘くん、僕になんて言ったか覚えてる?
『宇宙人』って、いじめっ子のみんなと同じように言ったんだよ」
「っ……ごめん……なさい」
「謝っても許さないよ」
終わりだ……
本当は最初から解ってた事だろう?
あの時の裏切りを、簡単に取り返せるなんて甘い考えだったんだ。
誰だって、裏切られた相手をそう簡単に許せるはずがない、そんなのわかりきった事だったんだ……
「っご、めん…っごめんなさい……っ」
「………」
「ごめん……っごめんな、橘っ」
謝って許される事じゃない。
謝っても許さないと言ったのに、俺の口から出てくるのは、芦屋への、橘への謝罪。
ただ『ごめん』と繰り返した。
そして繰り返す内に、俺の瞳から涙が溢れはじめた。
どうして俺が泣くの?
何が悲しくて泣くの?
芦屋に本当の事言われて悔しいから?悲しいから?
嫌われたから?
「ごめん…っ…もう、お前に関わったりしないから…お前が、俺を見るのも嫌ならバイトもやめる、2度と会わないから…っだから……離して…っ」
限界だった。
さっきまで俺だけが幸せと思っていた時間は、急変して、俺は今、絶望の底にいるようだ。
涙が止まらない、涙を拭いたくても拭えない。
芦屋にこんな近くで泣いてるのを見られてるのに、早く涙が止まればいいのに、もう泣きたくないのに、早く芦屋の前から去りたいのに……
「離して……っ離して、くれ…」
「嫌だ」
「っいい加減にしろよ! お前がもう俺の事大嫌いなのも、見たくないのも、わかったから早く離せよ!
早くッ、早く離して、俺を嫌いだって、言えよ、裏切り者って言えよッ!」
そしたら、俺は潔くお前の前に現れない理由が出来る。
『裏切り者』『嫌い』そう言ってくれれば、お前を諦めれる気がするんだ、こんなに苦しくて、辛い気持ちにならずに済むんだ…
「…ねえ、僕がそんな事言うと思うの?」
「っわ、!」
あの日以来の、力強い抱擁
ギュゥってすごい力で、抱き締められてる。
頭も押さえつけられて、腰も橘の腕に抱かれて、身動きが取れない。
何で…俺の事嫌いなくせに…こんなことするんだよっ
何で抱きしめるんだよ…
「っぅ…なん…でっ…離せ、よ……離してくれよ!」
「嫌だ。離さない」
「何で抱きしめるんだよッ! 思いっきり俺を突き放せよ!
嫌いだって、裏切り者だって、俺を拒絶しろよ!!」
「しない、紘くんを拒絶なんてしないよ」
ギュゥ、ギュゥって
俺が強く言う度に抱きしめる力が強くなる。
橘の匂いも、腕の心地よさも、堪らなくなる。
涙が止まらない、溢れるばかり
みっともないくらい嗚咽まみれになって、芦屋の服を俺の涙で汚す。
「…紘くん聞いて」
「嫌だ…っ離せ」
「紘くん」
「何も、聞かないッ、慰めなんて要らない、」
「紘くん聞いて!」
「嫌だッ!もう何も聞きたくない、期待したくない!お前の言葉は俺を期待させるばかりで、俺を傷つけるんだ、そんなの要らない!」
「紘!」
ビクッ。
初めて、呼び捨てにされた。
そして初めて橘の怒声を聞いた。
いつもはあんなに優しく、「紘くん」て呼ぶのに、全然優しくない、怖い…
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